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誕生の予感

 工業惑星タヨト。


 真魔宙皇国の魔皇、オトの魔宙船が、その一角に着陸する。


 あらかじめ待機していた、アヌド族の者が、オトが出てくるのを待ち受ける。


 魔宙船の扉が開き、オトが出てくる。


 アヌド族の者が、声をかける。


「お待ちしておりました、魔皇大陛下。どうぞこちらへ」


 アヌド族は、かつての主であった別部族が開発した人工超知能が、自己増殖を覚えたことで誕生した、人工部族であり、自らが人工知能であることを生かして、高い水準の人工知能を搭載した様々な工業製品を生産することで、皇国内からも高い評価と信頼を得ている部族である。


 たまたま、その魔王がオトの部下であり、先代魔皇とオトを慕う一方で、フィンには反感を抱いていたので、こうして、オトが建国した真魔宙皇国の領土になった経緯がある。

 アヌド族自身は、今の魔皇が誰かなどは、自らの工業製品がきちんと流通して利益が得られる限りは、特に気にすることはないので、オトはこの点からも、安心してこの星を訪ねることができた。


 そのオトは、アヌド族に案内され、広場へと向かう。


 アヌド族が言う。


「こちらが、先代の宇宙魔皇大陛下の命で作成した、対マハク使い用の新型魔装機兵でございます」


 オトは、それを見て、言う。


「なるほど。性能を調べたいので、一人にしてくれないか?」

「かしこまりました」


 アヌド族は、下がる。


 広場には、オトと新型魔装機兵のみが残る。


「さて、見せてもらおうか…」


 オトは、目をつぶり、新型魔装機兵の能力を感じ取る。


「魔力感知機能を搭載した人工知能により、疑似的にマハク・マコクの道を再現する力があるようだ。

 だが、いかんせん、マハクもマコクもほとんど知らない素人が作成したものだから、人工知能の学習機能で補っても、このままではせいぜい惑星級どまりだろう。

 フィン相手でも、反乱軍相手でも、これでは戦力としては不十分だ。私が改造するとしよう…」


 魔装機兵は、パーツ単位に分解され、浮遊するパーツの中でも、特に重要になってくる人工知能回路や魔力感知装置などが、次々と作り換えられていく。


 やがてその動きが止まり、浮遊していたパーツ群は、再び一つの形に戻る。


「これで良し。試してみるか」


 オトは、そう言って、自らの魔剣を起動した。


----


 最寄りの文明から数十魔力年は離れている、アマノガワ銀河の片隅の一角。


 分厚い黄土色の雲に覆われた巨大なガス惑星の、全体像が見えるぐらいの高さのところに、赤みが勝った茶髪の少年、リン・アマカケが現れる。


「ここか…」


 彼は、目を閉じ、その惑星の魔力と生命の気配を探る。


「原始的な生命がわずかに生息するのみ。確かに、文明は今のところ存在しないようだ。

 ラウラは、さすがにアマノガワ銀河魔帝だけのことはある。このような惑星のありかにまで精通しているのだから…」


 実はそのラウラも、時間管理のために全宇宙の情報を記録している、自らのクロノシンクロナイザーから情報を読み取っただけなのだが、リンは、そのことを知らないのか、知っていても特に気にしてはいないのだろう。


「ガス惑星の中に入り込んでもいいが、あれでは見晴らしが悪そうだ。だから、ここで試してみようと思う。

 サラ、今から君を元に最強の軍を作ろうと思う。フィンに対抗するためには、どうしても必要なことだ、だから、分かってくれるね?」


 リンは、そう言って、腰に差した形見のラフートを、そっと撫でた。

 ラフートは、美しい音を出した。


「分かった。君の望みだし、私の望みでもないから、彼女に君の記憶を引き継がせることはしないよ。

 でも、私はあのままの君を愛していたから、その、…胸周りを、というのには応じられないな。戦闘中には、邪魔になるだろうし」


 ラフートは、くすぶるような、しかし、不快ではない音を出した。まるで、しょうがないなあ、とでもいうかのように。


「理解してくれて、助かるよ」


 リンは、このラフートが音を出すときの原理を、感覚的にだが、理解していた。

 鉄が、強い磁石に影響されて、磁化した状態を残すことがあるように、サラの愛用していたラフートには、サラの記憶や考え方、感じ方が、多少ではあるが、残ったままになっていたのだ。

 そしてそれ故に、微弱な魔力を流したり、口につけたりして、音を出そうとすると、サラの気持ちが反映される。


 だが、このラフートが、その姿を見せるのは、リンに対してだけである。

 恐らく、リンの愛だけが、ラフートに残るサラの力を引き出せたからであり、そしてまたこのラフートも、力を引き出せない者には、サラの声を聞かせる気はないからであろう。

 だから、レイたちのような第三者の前では、リンは、サラの力を借りられずに、リンのラフート奏者としての本来の実力そのままの、ひどい音しか鳴らせないのであった。


 さて、そんなラフートからの声を聞いたリンは、一息ついて、言った。


「魔力よ、しかるべき形を身にまとい、そのもっとも美しい姿を形作るがよい。生命創造」


 それは、マコク・マハクの一つの究極的到達点とも言える術であり、リンですら詠唱無しではまだ使えない、記録上使った者のいない魔法であった。


 その魔法が、宇宙空間の魔力を渦巻かせていく。

1魔力年は、こちらの世界の1光年だと思って頂いて構いません(並行世界のことなので、厳密な同一性については保証しかねますが、大雑把には同じぐらいです)。

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