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それぞれの新兵力

 経済都市惑星ギランで、真魔宙皇国の建国と、その宇宙魔皇への即位を宣言したオト・ラーシャは、ダヴィリオーニで発動され、増幅していく強大な魔力を感知する。


「これは…複製術の使用か?フィンは、やっぱり考えることが狂っている」


 そして、苦い顔をして、唇をかみしめる。


 ただ生命の複製体を作成するだけであれば、時間をかければ高分子級程度の実力でも可能である。

 ただし、実戦に使えるだけの戦力を、即時に育てるための術、すなわち、宇宙空間の一部分の時間を加速したり、必要な情報を教え込んだりする術は、最低でも銀河級の実力を必要とする。

 ましてや、それを何千万体単位で一気に行う場合は、最低でも魔宙級の実力は、確実に必要となる。


 オトには、それだけの力はなかった。だから、彼はそれを真似ることができず、別の作戦で対抗する必要があった。


「それなら、やむを得ない。まだ実験段階ではあるが、対マハク使い、主にあの大賊アマカケの末裔を想定して開発された新型の魔装機兵を、私が直に最適化したうえで大量複製するとしよう」


 そして、通信を起動して、言う。


「工業惑星タヨトへ行く。魔宙船を用意せよ」


----


 リンたちもまた、その強大な魔力を感知していた。


 ラウラが言う。


「これは、魔宙級でも上位に入るレベルの力…。フィンの仕業ね」

「何億もの、フィン並みの実力を持った生命が誕生しているが…」

「マコクの古の秘術、複製術だと思うわ。それを、時間加速と組み合わせて、強力な即戦力を育て上げた、というところね」

「なるほど。ラウラ、アマノガワ銀河魔帝としての知識を以て、教えて欲しい。この銀河内で、最寄りの文明惑星への距離が最大になるポイントと、そこから文明惑星までの距離を教えて欲しい」


 それを聞いて、ラウラは目を丸くする。


「あなた、まさか…」

「ああ、そこへ空間転移し、秘密の戦力を作り上げようと思っている。

 時間的同時性は宇宙レベルで保たれているが、情報の中継は文明惑星単位で、情報の空間転移装置によるネットワークを作り上げることで可能になっている。

 そしてそれ故に、文明惑星から離れたところでは、強力な魔力を発動したところで、敵の感知は遅れる。

 魔力もまた、魔力波という情報であって、その伝達速度は有限だからね」


 スラスラと説明するリンを見て、今度はレイが驚く。


「頭脳派、いや、参謀の役割は、私が作者からもらっているもののはずなのに…」

「私自身が知っていたというより、これは、私の中に残したサラの記憶から読み取ったものだ。多分、私独りでは到底思いもつかなかった」

「サラのお陰ってこと?」

「そうだな」


 レイは、リンに聞こえない程度の小声で漏らす。


「…あなたは、死んでもなお、私の恋路に立ちはだかるのね」


 レイ自身、彼女にそんな意図などなかったこと、そして、自らが愛してやまない彼氏が他の人からも愛されるということについては、喜びこそ覚えど、嫉妬などしないことは、知っていた。

 だが、それでも、リンがサラを愛しているというこの一点によって、結局自分の想いは届かないという無力感を、改めて感じるのを禁じ得ないのであった。


 一方、ラウラは、改めて問う。


「そこに、生身で行こうとしているのかしら?」

「そうだね。魔宙船にも、簡易型とはいえ、情報転送装置がある。敵への発覚を月単位、あるいは年単位で送らせるには、生身で飛んで、作るしかないからね」


 それを聞いて、ラウラは、ため息をついて言う。


「そういう思い切った発想ができるところを見ると、サラちゃんがあなたを愛したのも、納得できるわね。

 力よりもまず、勇気がある。

 でも、それだけじゃなくて、仲間想いだとも聞いているわ」


 そして、ラウラは、勢いよく語り続ける。


「昔ね、サラちゃんにマコクの道を教えていたころ、彼女は、よくあなたのことを話していた。離れ離れなのに、あなたからの愛を信じてやまなかったし、あなたのことを話すときは、とても楽しそうで、そして嬉しそうだった。

 自分自身が魔王・大魔王だという立場に思い至った時だけは、ちょっとだけ寂しそうでもあったけど、それでも、普段は割と落ち着いた性格のあの子が、あなたのことになると、これでもかってぐらい、はしゃいでたのよ。

 そして、こうして直に話してみて、私も、サラちゃんがそれだけあなたを想う理由が、少しだけだけど、分かった気がする。

 だから、教えるわ。そのポイントは、ガス惑星になっている。文明が確認できていないから、名前はないけど、感じ取ってね。…ここよ」


 リンは、目をつぶり、ラウラの思考を読み取る。


「ここか」

「そうよ。

 あなたなら、できる…そう信じさせてくれるのも、あるいはアマカケの血筋の特徴なのかもしれないわね。それとも、私は、サラちゃんの愛を信じているのかしら?

 どっちにしても、後は任せて良さそうね」

「ああ、ちょっと行ってくる」


 そして、リンは、フッと姿を消した。

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