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目覚めたリン

 リンは、生身で、旧タイヨウ大魔王公邸を飛び出す。


 マハク使いなら、結界を使って真空中を進むこともできるうえに、感じ取られるテンシ族の機動力を鑑みるに、自分自身も生身で出撃した方が戦いやすいだろうと考えてのことである。


「待ってろよ、レイ…」


----


「あと2分、持てばいい方ね」

「しかり」

「ちっ、既に一部の魔宙船は爆沈しちまってるじゃないか。アタイらも、もう手の打ちようがないし」

「こんな時、リンがいてくれればよかったのに」

「しかり」

「あ、アイツなんかいなくたって、アタイは何とかできるさ!」

「ホッホッホ。ぶれないな、ガーゼインは」

「姉御、そこは笑えないってのさ」


 ブラックタイガーの揺れが激しくなる。


 アンジェラの思念が響く。


『抵抗できませんか。お陰で私は楽しくなってきましたよ。

 踊れ、酔え、そして、清き心に染まった状態で、死ぬがよい。

 皆の者、更に激しく削りなさい』


 テンシ族の攻撃の勢いが増す。内部に攻めず、外部から簡単な魔法を放ったり体当たりするだけの攻撃だが、その高速性と、魔宙船の的の大きさ故に、ダメージが蓄積していく。


「また一つ爆沈しやがった。これじゃ、アタイらは…」

「あと1分持つか持たないか、ね」

「しかり」


 レイたちは、覚悟を決める。


 その時。


『待たせたな』


 思念が響く。


「リンなの?」


 レイが問う。


『新手ですか。そして、お目当てのようですね。

 もう、遅いですがね』


 気付いたアンジェラが、そう思念を飛ばす。


『魔宙分断』


 リンは、そう唱える。


「テンシたちの魔力回路を、強制的に断ち切る力技かしら?」

「しかり。マコクの技だ、しかも」

「マハクではなく?アイツだけ、どこまで行っちまうってのさ…」


 レイたちがそんなことを言い合っている間に、魔力回路から強制的に孤絶されたテンシたちが、次々と塵になっていく。


『さすがに本命は違いますね。

 魔力回路によってつながっているテンシが分断されると、最も魔力が集中している一体以外は、その生命を維持できなくなる。

 この私達の弱点を、見抜いたうえで瞬時に突いたのですから。

 どうやら私も、本気を出すしかなさそうですね』


 アンジェラがそう思念を飛ばす。


『たかが一人には過剰戦力でしょうけど、参ります。穢れし心を貫け、聖光』

『そんなものは、吸い尽くせばよい。魔黒球』


 テンシの聖魔法による光線がリンへと向かう。


 が、リンに届く前に、リンの目の前に生じた黒い球体に、その光は全て吸い取られる。


 そして、リンの思念が響く。


『魔熱線』


 熱線が、アンジェラが抵抗のために張った結界ごと、アンジェラを蒸発させた。


『遅れてすまなかった。レイ、ゴーティマ、そして、ガーゼイン』


 レイが、リンの方を見る。彼は、ラフートを口にしていた。宇宙空間であるため、音は聞こえず、何を奏でているかは不明だが、あれは…。


「サラのね。やっぱりリンは、彼女だけしか見てないのかしら?…でもまあ、立ち直れたなら、今はいいとするか」

「使えるのか、マコクの技を、飲まれずに。さすがだ、リンは」

「あ、アイツなんかいなくたって、とは、流石に言えないね。全く、どこまで強くなればいいのさ、リンは」

「というか、ラフート吹きながらでもあれだけの攻撃が可能とか、リンだけ圧倒的に強くなってるじゃないの。私たち、これから出番失うんじゃないかしら?シェイやベンさんのように」

「出番?」

「ああ、もう、何で異世界の声が自然と私の思考になじんでいるのよ?」


 レイが、ふと混ざった異世界の声に戸惑うと、ゴーティマは言う。


「強くなったからだな、レイが」

「それ、なんか複雑な気分だわ。そのうち勝手に異世界旅行でもさせられちゃうかもしれないじゃないの」

「ホッホッホ。楽しそうだな、それも、レイ」

「笑い事じゃないわよ」

「あ、アタイはまた取り残されるのね。どうせアタイは、独りでも平気なんだからさ!」

「ガーゼイン、寂しいときは、そう言っていいのよ」

「さ、寂しくなんかないってのさ!」

「ホッホッホ」

「だから、姉御もアタイを笑わないでよ!そのうち本当に怒るからね?」

「それよりも、被害状況を確認したほうが良さそうね」

「任せておけばよいだろう、それは、シェイに。数ではないからな、強敵との戦いでは。十分だろう、生きていれば、我らと、リンが」

「あ、アンタら、アタイの部下たちはどうするのさ?」

「まあ、被害は少なそうだし、私達にも優先順位があるの。だから、ガーゼイン、あなたの艦隊のことは、あなた自身で何とかしてくれると助かるわ」

「しかり」

「あ、アタイらの扱い、随分とひどくなっちまったな…」


 三者三様に語り合う中、リンは、空間転移によってブラックタイガーに乗り込む。


「間に合って良かったよ」

「いや、もっと早く来てくれれば、被害は減ってたからね?まあ、立ち直ってくれたようで何よりだけど」

「しかり」

「あ、アタイらは、アンタがいなくても勝てたんだから!」

「そうか、みんな、ご苦労だった。褒美に、せっかく学んだラフートを聞かせて進ぜよう」


 リンは、上機嫌にラフートを取り出し、吹き始める。


 ひどい音が鳴った。


「一人の時はちゃんといい音が出せたのに、どうしたんだろう?」


 リンは、狼狽した。

魔宙分断は、魔宙切断や魔流分断と似ていますが、別物です。


・魔宙切断…「宇宙を」「時空ごと」切断

・魔宙分断…「宇宙の」「魔力の流れを」切断

・魔流分断…「生命の」「魔力の流れを」切断

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