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それぞれの思惑

「敵の総本部周辺に、大規模な宇宙艦隊が展開されているようだ。恐らく、あのアマカケの末裔もそこにいるであろう。

 奴は強力なマハク使いであるのみならず、マコクの道にも目覚めたようだ。気を引き締めて攻めるぞ」


 タイヨウ系の外縁にたどり着いたテンシ族の族長アンジェラは、配下に向かって、そう語る。


 そして、隊形を組んで、チキュウ方面へと、テンシ族は高速で迫っていく。


----


 その艦隊に合流したガーゼインの母艦、ブラックタイガーに乗っているレイたちは、そうしたテンシ族の動きを察知していた。


「テンシ族、どうやらこっちに来るようね。狙いはリンのはずなのに、どうしてなのかしら?」

「感知できないからだ、彼らの言うところの禁術の力しか。いると思ったのだろう、推測で、リンが、こっちに」

「どうやら、本当にアタイらに出番が来そうだね。姉御は安心しな、このアタイがしっかり守るからさ」

「ホッホッホ」

「変わらないのね、ガーゼインは」

「な、何だよ、二人とも。アタイが姉御を守って何が悪いのさ。引きこもっているアイツを守りに来たんじゃないんだからね!」


 そんなことを言いながら、各々戦闘態勢を整えていく。


----


 魔宙皇国首都、ダヴィリオーニ。


「テンシ族よ、攻めているところが違うぞ。アマカケの末裔さえ倒れれば、反乱軍の瓦解は時間の問題だというのに。

 だが、表立って連絡を取るわけにはいかない。彼らは正規兵ではない上に、彼らの目的は邪宗掃討であって、皇国への協力ではないからな。

 さて、どうしたものか…」


 宇宙魔皇は、独り言ち、頬杖をついて考え込む。


----


「魔帝陛下。あなたは行かないのですか?テンシ族の義勇兵と共に」

「お前が行けばいいのではないか?行きたければ、好きにするがよい」

「それはできませんね。何しろ、このアマノガワ銀河では、いつどこで反乱が起きるか分かったものじゃない。私がチキュウ一つにかかりっきりになるわけにはいかないのです」

「それは、傍系皇族である私の監視が一番の目的だからだろう。お前は、本来宇宙魔皇大陛下直属の指揮系統で動くはずの監視辺境伯でありながら、先の大陛下の頃から、お前は当時の大陛下ではなく、学友であったフィンに忠誠を誓っていたからな。

 私がフィンをよく思っていないことを知っていて、監視しているのだろう?」

「ハハ、まさか皇族である陛下が反乱を起こすとは、さすがに思いませんけどね」

「相変わらず建前ばっかりだな、ギガンテ監視辺境伯」

「ハハ、そうおっしゃらずに」


 そう、ここは、アマノガワ銀河魔帝が住まう、魔帝公邸である。

 アマノガワ銀河は、これまではそこまで治安が悪くなかったため、魔帝公邸は一応中心惑星ミーキガウの地上に落ち着いている。

 しかしながら、そもそもがアマカケの誕生の地ということもあり、緊急時には宇宙戦艦として離陸できる仕様にはなっていた。


 そして、今、ギガンテと呼ばれたティタン族出身の男は、暗に実際に宇宙戦艦として飛び立たせようとして、アマノガワ銀河魔帝と話していたのであった。


 しかし、それに対し、銀河魔帝は同意しない。


「お前もマコク使いなら感じるだろう。テンシ族が攻めようとしているあの場に、彼らの本命となる大賊アマカケの末裔はいない。だから、いま目立つ動きをするのは、かえって自分たちの手の内を奴に明かすことになって、危険だ」

「しかし…」

「それに、今の奴に勝てる力は、私にもお前にもない。二人で一緒に戦ったところで、厳しいだろう。

 あのサラちゃんと同じぐらいか、それ以上の力があるんだから」

「ハハ、直系でありながら敗れたあのラーシャ家の面汚し、皇国の恥に…」


 ギガンテ伯は言いかけて、魔剣の刃が当てられるのを感じた。


「それ以上言ったら、殺すぞ。お前も、分かっているはずだ。サラは、最終的に、私やお前以上の力を身に着けたということが」

「ハハ、これは失礼。ですが、仮にも陛下は彼女の上に立っていた、アマノガワ魔帝なのですから。そんなに先のタイヨウ大魔王陛下をお思いなのでしたら、それこそ、仇討ちをする機会ではありませんか?」

「私には、サラちゃんを殺したのが奴だとは思えない。あの時、何か別の気配が、一瞬現れたと思ったら、すぐ消えたのを感じた。だから、真相を見極めたい」

「陛下がご自身で仰ったんですよ。大賊アマカケの末裔に、彼女を倒すだけの力があったと」

「だが、奴は確かに、彼女を愛していた。それこそ、あの子を可愛がって止まなかった先の大陛下と同じぐらい、強い愛情を持って。だから、奴が殺したというのは不自然なんだ」

「敵同士です。百歩譲って愛していたとしても、大賊の末裔なら、迷わず殺すでしょう」

「やっぱり、お前、何か知っているな?どうしても奴の仕業にしたいという意図を感じるぞ」

「ハハ、気のせいですよ」


----


 結局アマノガワ魔帝を説得できないまま一人になったギガンテ伯は、通信を起動する。


「大陛下。やはり、彼女は戦争に出る気配がありません。それどころか、大陛下が先のタイヨウ大魔王を殺したことに、薄々気づいてすらいるかもしれません。

 やはり、排除しますか?」

「うむ。そうしてくれ。そうすれば、兼任の名目で私が直に出て、大賊アマカケの末裔をさっさと潰すこともできよう。朕は期待しているぞ、ギガンテ監視辺境伯」

「光栄です。では、仰せのままに…」

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