ガーゼインの帰還と新魔皇のプロパガンダ
ガーゼインは、魔宙船転移により、タイヨウ系に舞い戻っていた。
ところが、新連邦共和国軍の総本部に来たにも拘らず、司令官のリンに会わせてもらえないことが原因で、副司令のレイを相手に口論する羽目になってしまった。
「ほら、このアタイが戻ってきたんだから、さっさと司令官に会わせてくれない?アンタじゃなくて、司令官に直々に伝えたいことがあるんでさ」
「今は、リンには誰も会える状態じゃないわ。だから、何かあるのなら、私に言って欲しいわ」
「アタイを縛ることは、誰にもできないってのさ。このアタイは、宇宙海賊なんだからね」
「でも、リンが会えない状況なら、誰かが代わりに聞くしかないじゃない?」
「…サラのことが響いてるのかい?」
「そうよ。だから、代わりに私が何とかするから、教えてくれないかしら?」
ガーゼインは、一瞬躊躇した後、言う。
「なら、アタイは姉御に話したいわ。アンタはどう見ても、このアタイのセクシールックスに妬いてるだけにしか見えないからね」
「妬く相手なら、いるとしても、あなたじゃなくて、サラね。もういないのに、リンの心はまだしっかり掴んでいるから…」
「そうかい。フン、どっちにしろアンタは姉御と競う悪い虫だから、気に入らないのさ」
「まあ、いいわ。じゃあゴーティマを呼んでくるわね」
レイが、別室へと移動する。しばらくして、ゴーティマがやってくる。
「どうしたのだ、ガーゼイン。用とは、我に」
「姉御、アタイ、ヒュリーゼのダチの店で飲んでたらさ、ダチが教えてくれたんだ。姉御たちを狙って、テンシ族が来るってさ。だから、アタイは姉御を守るために、戻ってきたのさ」
「ホッホッホ。リンなのだろう、本当に守りたいのは」
「あ、アタイはそんなこと…」
「ホッホッホ」
「姉御、笑うってのはひどいんじゃないの?」
「言わんのだ、そう」
変わらぬツンデレぶりにゴーティマの笑いがこぼれ、ガーゼインもつられかけた。
が、再び彼女の顔が引き締まる。
「で、姉御、アタイはリンに確かに伝えて欲しいんだけどさ、誰がアイツに伝えてくれるんだい?」
「誰も。欲している、一人の時間を、リンは。気付いているはずだしな、それに」
「姉御たちマハク使いは、何でも感じ取っちまうから、話にならないっての。それなら、アタイが来る意味なかったんじゃないか?」
「ホッホッホ。ある、意味は。欲しいからな、戦力は。知られている、彼らの強さは、歴史において」
「じゃあ、せめて手伝わせていただくとするさ」
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魔宙皇国首都惑星、ダヴィリオーニ。
新たな宇宙魔皇となったフィンは、魔皇公邸より全宇宙に向けてメッセージを送信する。
「魔宙皇国臣民諸君、朕は、新たなる宇宙魔皇に即位したフィン・ラーシャである。
先の魔皇大陛下は、この度の反乱、並びに反乱軍の進撃を止められなかったことにお心を痛め、自ら魔皇の座を朕に譲ってくださった。
故に朕は、先の魔皇大陛下の第一皇子にして後継者として、しっかりとその使命を果たし、反乱軍を殲滅することをここに誓う。
諸君、既に、果敢なるテンシ族の者たちが義勇軍を結成し、反乱軍の艦隊を破り、敵陣の本丸に迫っている。
朕もこれに続く。だから、諸君も、積極的に奮起して、反乱軍を蹴散らそうではないか。
共に戦って、1000年間守られた秩序と平和を、取り戻そうではないか!」
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そのフィンのメッセージを、冷めた目で見ている魔族の女性がいた。
「全く駄目ね。伯父様の足元にも及ばないわ。こんな茶番しなくても、伯父様だったらみんなついていったのに。
私は、この戦争、現時点では静観させてもらうわ。だって、どう考えても私じゃ、あのアマカケの末裔には勝てないしね」
(それよりも、送り込まれた監視辺境伯を何とかしないと。こいつが監視しているのは、反乱軍ではなく私なのは間違いないから…)
めんどくさいな、と思い、彼女は、ため息をつくのであった。





