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砂漠の隠者ベン


「ニンゲンか…。全く、無謀なことをしよる。

 そこの女!男を魔車に乗せるんだ。奴らは一度引いても、今度はより大人数で襲ってくる。

 その前に退くぞ。いいな?」


 ローブの男は、そう言ってリンを担いだ。


「あなたは?」


 レイは、突如現れた男に尋ねる。


「話している暇があったら車に乗せるんだ!奴らが来る前に。急いで!」

「は、はい!」


 言われて、レイは男とともにリンを車に入れる。


「詳しい話は後だ。一度私の庵に向かうぞ」


 そう言って、男はこともなげに魔車に乗り込むと、魔車は勝手に走り始めた。男はハンドルを握ってすらいない。


「え?」

「…いいから行くぞ。女、お前の名は何という?」

「レイです」

「して、この男は?」

「リンです」

「私は、ベンだ。いろいろあって、砂漠で一人隠遁している」


 男は被っていたフードをとった。

 レイは驚いた。


 彼が、どこからどう見てもニンゲンだったからだ。日焼けした中年か、初老ぐらいの男。


「あなたは、ニンゲンですか?」

「まあな。だがスナ族もうかつに手出しはできまい」

「どうしてニンゲンがこんなところに?しかもスナ族に襲われずに?」

「まだ、君たちに話してよいか分からぬ。男、リンが意識を取り戻したら、まずは君たちから話せ。事情次第では、色々教えてやらんこともない」

「は、はあ…」


 そのまま魔車はどこかへ走っていき、岩壁に掘られた家の前で停車した。


「簡単な回復魔法はかけてある。じきに彼も意識を取り戻すだろう。

 だが、まずは飯でも食っていけ。帰るにしても、魔車の魔力を補充する必要もありそうだし、今日は既に夜も遅くなってきた。砂漠の夜は危険だからな」


 スナ族に襲われた時点で既に夕刻ではあったが、気付くと既に空は漆黒に覆われ、星々が瞬いていた。



「…生きているのか?確かスナ族にハンマーで沈められたはずなのに」


 リンが目覚めると、そこは岩でできた家の、硬めの寝床だった。


「ここは?」


 そうつぶやくと、いつの間にか傍らには、中年ぐらいのよく日焼けした男がいた。


「目覚めたか。スナ族の土地に乗り込むなど、全く無謀なことをしよる。

 しかし、訳もなくこんなところに来たりはしないのだろ?話を聞かせてくれないか?」

「あなたは?」

「ベンだ。君は、リンというんだってな」

「はい、リン・アマカケと申します」


 男は、その名を聞いて少し驚いたようだった。


「アマカケか。大方察した。何か理由があって、強くなりたくてスナ族と戦いに来たというところか?」

「え?何故名乗っただけなのにそれがわかるんですか?」

「…やはりか。アマカケの血は1000年前に途絶えたと思っていたが…」

「アマカケの血?」

「知らないのか?」

「私は、ただ魔族に奪われた恋人のサラを取り返すために強くなりたいと思っていただけなので…」


 男は、しばし沈黙した後、ゆっくりと口を開いた。


「そうか。ならば、一から話さねばならないだろう。魔宙皇国では、まともな教育を行ってなど…いる訳もないしな。

 長くなるかもしれないから、先に結論だけ言うと、君はまだ、その真価を発揮できてはいない。人間なら、一属性の魔法を使えるだけでも、と思っているだろう?

 ところが、実はそうじゃないんだ」

「と言いますと?」

「誰でも、ニンゲンでも、魔族に匹敵する力を手にすることができる。1000年前に魔宙皇国に最後まで抗った、かの大英雄アマカケのように」


 男は、深く息を吐き、話を始めた。

今日はここまで。では、また明日!

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