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Sorry, but our princess is in...

 空中に浮かぶ幾筋もの刃を激しく交えながら、二人は語り合う。


「どうしても、戦うしかないのか?」

「どうしてもよ」

「君は、本当にそれでいいのか?君がやりたいことは、こんなことなのか?サラ」

「リン、あなたが、結局は皇国に反旗を翻す人たちの英雄になるしかないのと同じ。

 皇女として、意思の介在の余地もなく、やらなければならないことなの。私には、こうするしかないのよ!

 …それが、血筋と魔力の導く、私達の運命なのよ」


 最後の一言はどこか弱々しく言うサラ。


「運命なんて、力を付ければ抗えるさ。世界の魔力を受け入れるだけでなく、世界の魔力に作用すればいいんだ。

 それこそが、君たちの知っているマコクの道なんじゃないのか?

 だから、私は、これを使おうと思う…。書き換えのキス」

「え?…んっ」


 いきなり口づけされたサラは、それを一瞬受け入れた後、リンを引き離した。


「だ、ダメよ、無理矢理私たちの運命を書き換えようとしても…」

「君がそれを望まないのなら、ね。でも、君の望みは、こんなことじゃないはず…。だから、教えてくれよ。君の真の望みを」

「違うのよ。これは、誰かの呪いではないの。だから、その術での書き換えは、できないのよ。それに…」

「それに?」

「私には、無理矢理書き換えようとする人が出たら、死ぬ呪いがかけられているの。だから、これで、さようならね」


 サラがそう言うと、全身が薄く透き通り、手足から、徐々に光の球へと変化し始めた。


「そ、それなら、解呪すればいいだけのことじゃないか!」

「ダメよ、だって、これはパパがかけた呪いだもの。あなたには、まだパパに勝てる力はないから…」

「サラ!」

「いいのよ。

 最後に、あなたの変わらぬ思いが伝わって、嬉しかったから」


 そして、サラは、とうとう、完全に消えてしまった。


「サラ、私は、もっと、君と…ん?」


 言いかけて、リンは何かを感じて、黙った。


「まだ、生きているな、サラ。今のは、本体ではなかったってことか…」

「んっ、私は…」

「レイ、戻ってきたか」

「ええ。サラは?」

「ここにはいないようだね」

「まさか…」

「死んではいないさ。ただ、ここではない別のどこかにいるみたいだね」

「Sorry, but our princess is in another castle、ってとこかしら?」

「何それ?」

「ま、また、異世界から声が…」

「そうか…」


 しばしの沈黙の後、レイは何故か赤面して、早口で言う。


「あ、後、さっき言ったことはナシで!」

「さっき?」

「…もう一度言わせないでよね。

 私には、あなたたちの邪魔をする権利もなければ、力もないんだから…」

「あ、そういうことか。ま、どっちでもいいけど?」

「どっちでも?」

「大切な仲間の望みとあれば、それぐらいのことはなかったことにしたっていいってことさ」

「仲間?」

「ああ、仲間だ」

「そ、そうね…」


 レイは、心持ち目を潤ませる。それを知ってか知らずしてか、リンは、言う。


「とりあえず、一旦帰るか」

「…そうね。行きましょ!」


----


 タイヨウ系内の某所。サラは、宇宙魔皇に連絡を取っていた。


「…危ないところでした、大陛下。あそこで意識を遮断していなければ、今頃私の本体も死んでいたでしょうね。

 全く、親バカもほどほどにしてくださいよね」

「おい、つまり…」

「ええ。運命に抗えないのと同時に、私達は恋情にも抗えないのですわ、パパ」

「普通、敵と知ってもなおキスをするか?君の恋人のリン・アマカケって子には、常識がないんじゃないか?」

「大賊…異なる立場からは大英雄とも言われる、あのアマカケだって常識外れだったでしょう?アマカケの血筋に、常識が通用すると思ってはいけないようですわ。

 それが、彼のいいところでもあるんですけどね」

「だが、分身体とはいえ、サラ、君を破ったということは…」

「ええ。既に彼の力は、銀河級に到達していますね。そして、彼も、レイも、今なおものすごい潜在能力を秘めているのを感じましたわ。

 今は大丈夫でも、そのうち、本当にパパを脅かすほどになるかもしれませんね」

「やけに嬉しそうに言ってくれるじゃないか。サラ、君は、パパと彼氏の、どっちが大切なんだい?」

「どっちもよ…。だから、こんな戦争なんか、本当はやめたい。けど、分かってるでしょ?

 既に彼は、反乱軍のリーダーにされてしまった。ただの一般人アマカケではなく、彼らの英雄になってしまったのよ。

 そうである以上、私は皇女としての務めを果たさなくてはいけない。そうなんでしょ?」

「いや、無理はしなくていい。愛する娘を苦しめる方法でなくとも、アマカケの末裔は倒せるはずだから…」

「嫌よ。他の人に倒されるところを見るぐらいなら、私が倒した方がマシだわ」

「だが、君は彼を愛している。愛する人を殺せるのか?」

「…」

「君は優しい子だからな。別の監視辺境伯を送り込むとしよう」

「……ぐすん」

「いい子だから、泣かないで。もっといい男だって、この広い宇宙にはきっといるはずだしね」

これで、チキュウ魔王編は完結です。


次から、新章に突入します。

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