サラとの遭遇
シェイに魔空船の見張りを任せ、二人で先に進むリンとレイ。
「何故こっちなのかしら、リン?」
「分からん。だが、感じる。サラは今、地下牢ではなく、公邸の執務室にいる…」
「そうね。まさかどこかのビルさんみたいに、政務の真っただ中にそういうことをしている変態魔王じゃなければいいけど…」
「ビルさん?」
「…何でもないわ。私、時々異世界の声が吹き込まれるみたいなのよ」
「そうか…。流石だよ、リン。私はまだそのレベルには到達していないようだ…。君は、ある意味では既にマルチバース級の力があるようだね」
「あなたはあなたで、既に十分すごいじゃないのよ、リン」
----
サイバネティック伯の力では、やはり乗り切れなかったようだな、と感じたチキュウ魔王は、宇宙魔皇に連絡を取る。
「大陛下、例のマハク使いに対応するべく出向いたサイバネティック監視辺境伯は、既に倒れた模様です。
敵の意図を探るべく、私が向かおうかと思います。よろしいですね?」
「構わん。だが、仮に奴らが本当に大賊アマカケの末裔なのだとしたら、分かり合おうなどとはゆめゆめ思うなよ?
アマカケの血筋と我々魔族とは、決して相容れることのない存在なんだ」
「分かっていますよ、大陛下」
「…死ぬなよ?」
「仰せのままに」
そして、通信を切り、ため息をつく。
…名ばかりのアマカケなら、まだ可能性はあるのに、そうは言ってられなそうね。この感じだと、彼は、本物だわ。
----
首都惑星ダヴィリオーニで、宇宙魔皇は、皇国軍総司令より、また別の連絡を受ける。
「大陛下、タイヨウ系に派遣されていたサン・キラーからの通信が途絶えました」
「何?」
「どうやら、あのマハク使いによって分解された模様です。また、チキュウ上でも、大量の魔剣が天から出現し、スナ族に授けられた、などという奇妙な報告が次々と入ってきております」
「不穏な力の動きは感じていたが、まさか、な…。既に、陽子級に片足突っ込んでいるかもしれんぞ。
魔神兵の派遣準備を進めるように」
「了解しました、大陛下」
----
全球的に海洋に覆われている青い海洋惑星、ネプル。
水陸両生で、腰回りに6つの触手が生えていることと緑色の髪の毛とが特徴的なタコ族の一人、ゴーティマは、タコ族の王に向かって言う。
「感じる、チキュウに、強力なマハク使いの存在を。
向かわねばならぬ、導くために。行かせてほしい、陛下、我を、チキュウに」
「1200歳にして、かつて大英雄アマカケと共に戦ったという長老殿を止めることは、我々にもできますまい。
戦局も、お弟子さん達のお陰で、我々が優勢に進めておりますしね。
チキュウと言えば、確かアマノガワ銀河にありましたよね。あの大英雄アマカケも確かあの銀河の出身…」
「それ故、可能性は高いと思う、アマカケの子孫である。だからこそ、会わねばならぬ、我は」
1200歳ながら、齢を感じさせない若々しいルックスの彼女は、力強く、そう言った。
----
「…とうとう来たのね。リン、レイ」
魔王公邸の執務室に二人が入ると、そこには、懐かしの黒髪スレンダー美少女が立っていた。
だが、元々彼女にはなかった角が生えていた。
「…サラ、なのか?」
「そうよ。久しぶりね。待ってたけど、こういう形では会いたくはなかったわ」
「そうか、サラ、もしや、今は色々と取り込み中だったか?
だが、どっちにせよ、サラを襲う奴なら、チキュウ魔王だろうと宇宙魔皇だろうと絶対に許さん!
待ってろ、今、助けてやるから…」
「リン、…いや、リン・アマカケ。あなたには、私を助けることはできないわ」
「サラ、どういうことなんだ?私は新たな力を手にしたんだ。だから、きっと君を救うことだって…」
「まあ、いいわ。レイ、あなたは気付いているんじゃないかしら?」
サラは、そう言って、レイを見つめた。どこか、悲しみを含んだ瞳で。
「まさか…、あなたが、チキュウ魔王その人なのかしら、サラ?」





