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第1話 乙女ゲームの世界へようこそ

 あなたは私立奏籐学園に入学した女子生徒。幼馴染と共に入学したこの学園では、ここ暫く生徒会と風紀委員によるいがみ合いが行われていた。

 もはや誰も知らない、確執の原因。彼らと仲を深めるうち、あなたはそれに、元生徒会長である自身の兄が関わっていることを知る。


 どうすれば、大切な人たちを仲直りさせることができるのか。あなたは学園の秘密を暴くため、奔走する――。


 「気を付け!! ――これより、朝礼を始めるッ!!」


 いつもの始業の鐘が鳴り響いたかと思うと、生徒会長である新城 東一(しんじょう とういち)がマイクを手に叫んだ。

 体育館には遅刻者は一人もおらず、全校生徒がたたずんでいる。ただいま、AM 5:00である。


 「今日もまた、一日が始まる! お前ら、有給は欲しいかァッ!?」


 「「「欲しい!!」」」


 「お前ら、ボーナスは欲しいかァッ!?」


 「「「欲しい!!」」」


 「イーイ返事だ! よし、そんじゃあ、声出しはじめ!! しっかりしろよ、いざというときに噛んだらすべてがパァだからな!」


 東一がばっと手を挙げると同時に、プロジェクターにいつもの台詞が照らされる。毎日毎日唱えたが、こればっかりは気が抜けない。俺の、俺たちの休日のクォリティがこれにかかっているのだから。


 「――その一、『君の瞳は綺麗だね』ェ!!」


 「「「その一、『君の瞳は綺麗だね』ェ!!」」」


 辺りに、大真面目に響き渡る口説き文句。ああ今日も、また“4月9日”が始まるなあ、と俺は実感した。




 俺の名は二階堂陽太(にかいどう ようた)。スポーツが得意な爽やか担当で、副風紀委員長をしている。サッカー部のレギュラーでもあり、また、寮の監督生でもある。

 お人よしが祟って人の頼みを断れないところがあって、少しオーバーワーク気味になってしまうことも多い。それが原因で体調を崩してしまったところを、“あなた”に助けられる――という出会いから、俺のルートは始まる。


 そう、俺は攻略対象のキャラクターなのだ。


 「――陽太。テメェ、まーた朝礼中ぼんやりしやがって」


 人の散会した体育館で、舞台から降りてきた東一が俺の頭を小突く。物思いに耽っていた思考は霧散し、俺は現実へと引き戻される。


 「いや、いや、ちゃんと言ったぞ。俺だって、休みの日はたっぷり遊びたいし、頑張ってるぞ」


 「……ま、信じてやるよ。ちょうど先週はいいとこで帰還だったからな」


 「ああ、アレだろ。ドラゴン退治の……あれは惜しかったな。ウチの委員長なんて、ソロでヴァンパイアロードを討伐したらしいぞ」


 「くっそ、うらやましいな、オイ。俺様は……人気すぎて、気が抜けるのは、『有給申請』した時と、今日くらいだぜ」


 東一は「人気者はつらいぜ」と肩をすくめる。彼は本当に人気なせいで、初登場である4月10日からほぼ毎日“あなた”の相手をすることになる。


 「ま、やりがいはある。お客様(“あなた”)は神様ですっつーしな」


 誇らしげに笑うと、東一は俺の肩をばしん、と叩くようにして組み、そのままどこぞへと歩き出す。


 「おっと、何処行くんだ? 校庭はお客様(“あなた”)と幼馴染のイベント中だろ? 今日はサッカー、してやれないぞ」


 「ちっげーよ。ドラゴンとは行かなくても、ちょっとしたストレス発散くらいはできんだろ」


 「ああ、なるほどな……」


 東一は俺と肩を組んだまま、手芸部の部室へと進んでいく。文化系の部にも数名の“名持ち”が居るのだが、手芸部には誰もいない。

 ――ので、“あなた”が立ち入ることのできない場所なのだ。俺たちは連れ立ってその扉を開け、胸ポケットからカードキーを取り出す。


 「コード:【オープン】」


 『Cランクの管理者権限を確認しました。ゲートを解錠します』


 ――それでは、よき休日を。





 この世界は、なんというか少し特殊な世界である。


 俗にいう乙女ゲームに似通っているから、便宜上乙女ゲームの世界とでも言おうか。俺たちの世界は、一言でいうと、そんな感じの世界だ。


 俺には親が居ない。生まれたときからこの姿だし、他の名持ちも、なんなら名無しのやつだって、親を持っているやつは少ない。

 この世界で親を持っている名持ちは東一だけだ。彼の父はここの理事長をしており、“あなた”と顔を合わせることがあるから、唯一親を持っている。


 だが俺たちだって、ゲームみたいに電子データで出来ている訳じゃない。生きている。名無しと仲良くやったり、設定上不仲がデフォルトの風紀委員と生徒会だって一緒に飯を食べたりする。


 それにここは――単純な乙女ゲームの世界では、ない、と思う。


 かつて、生徒会の書記、篠田 悟朗(しのだ ごろう)は、乙女ゲームの書かれた少女っぽい雑誌を手に、考察を述べた。


 「私たちの世界は、とてもこういった、学園ものの乙女ゲームに似ています。時折やってくるお客様、そして、私たち名持ちが軒並み、整った顔であること。さらに、三年の時間経過が終わると、4月9日に戻るところなど、類似点は多々あります」


 なるほどほうほう、と頷いた俺に睨みをきかせ、彼はまじめに聞くように訴えた。


 「ただ、お客様が単純に私たちを作った上位存在なのか、と問われると、疑問が残ります」


 それは、そうだ。だって、何故なら――。


 「それならば、なぜ私たちに『管理者権限』などを与えたのか。それによって私たちは、営業成績……ッゴホン、指名率? ともかく、人気のいかんによっては――」


 ――“世界の外”に、出ることが出来るのだから。



 かなり適当に書いてるので更新は大分まちまちになります

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