#01
昔、別名義でWeb上に発表していた創作小説の番外編です。
男子一人(巡)が人外ですが、基本現実世界です。
初めて読む方は何が何やらわからないところもあると思いますが、この話だけで楽しんでいただけるように書いていこうと思いますので、よろしくお願いします。
「ねえー、まどまどー、俺、街に行きてえー」
「行きゃあいいだろ。あと、その呼び方やめろ」
「一緒にいこー」
「なんで貴重な休みをお前と過ごさなきゃいけねえんだよ」
すると修一は、円に向かってニカッと白い歯を見せた。
「俺の引き立て役」
「最低だな、お前」
「逆ナンとかされたいー」
「中学生に逆ナンするヤツなんているかよ」
「俺はもう高校生ですー。なんか蚊に刺されたぐらい傷ついた」
「大した傷じゃねえじゃねえか」
円は、修一の相手をするのがわずわらしくなり、理緒のほうを見てみた。
理緒は、化学室特有の黒い机の上に、手を広げて置いていた。
巡が、その掌の指の間に、超高速で順番にコンパスの針の部分を振り下ろしていた。
「……なにやってんの、あんたら」
「……ゲーム」
巡がコンパスを振り下ろす手を止めずに言った。
「理緒のリスクが高すぎねえか」
「お仕置きだから大丈夫」
その理緒は、
「手を離したら死ぬ……、手を離したら死ぬ……」
と、真っ青になりながら自分の手の指の間を高速移動するコンパスを目で追い続けていた。
「ホント、最悪……お前、なんで生まれてきたの?」
巡は理緒にお仕置きしながら、言葉でも彼女を痛めつけ続けていた。
「巡、今度の日曜、暇か?」
「この女を調教する予定で埋まってる」
「そんな不毛な予定はやめて、俺達と街に出ねえか」
「この女が喜ぶから嫌」
理緒の目に一瞬ともった光を見て、巡は彼女の希望を打ち砕いた。
そんな彼女が円はさすがに可哀想になってきて、円は最強のカードを切ることにした。
「そう言わずに。来てくれたら、新作やるぞ」
それを聞いた巡の手が止まった。
「……ページ数は」
「聞いて驚け。短編集で、500ページ超えだ」
「……わかった。行く」
母親と自分のラブコメ小説で釣れる男は珍しい、というかキモイ、と円は今更ながら思った。
こうして、日曜に街へ男3人で行く、という何ともむさくるしい予定が確立された。