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あがり症な悪役令嬢とドSなヒーロー達は混ぜたら危険

作者: 茶トラ

ここは乙女ゲームの世界。

私は悪役令嬢。

それに気付いてから、今まで頑張ってきた。

ヒロインを虐めるのは気が進まなかったけど。

大好きなゲームだったから、ハッピーエンドで終わらせてあげたくて。

物語通りに進めたつもり。


卒業パーティー。

全校生徒が集まっている最中、今までヒロインを虐めてきた悪役令嬢を、生徒会長でもあるヒーローが断罪する。

乙女ゲームでお馴染みな展開。

それが、今から行われようとしている。


そう。これが最後。

頑張れ、私。

役割を果たすのよ。

大丈夫、出来るわ。

たとえ、みんなの視線が私に集中しようとも…。

出来る…頑張れ…。


………。


「コウ、コウ!どこ?お姉ちゃん、やっぱり無理…。怖い、怖いよぅ。」



人々の視線から少しでも逃れられるよう、その場にしゃがみ込み、顔を隠しながら、私の義理の弟の名前を呼ぶ。

余りにもみんなの視線を浴びすぎて、持病を起こしてしまった。


私は前世から、人の視線が怖い。

誰かに見られていると感じると途端、身体が震え、思考が止まり、パニックに陥る。

せっかく、この世界にうまれかわったのに、前世を思い出した途端、この持病も一緒に再発してしまった。

非常にやっかいだ。



「姉さん、大丈夫。僕はここにいるよ。ほら、ちゃんと息吸って。」


義理の弟も、実は攻略対象者。

だが、前世を思い出して、持病を発症した時に、全て話した。

今でも多分、ここが乙女ゲームの世界だということに、対しては半信半疑だろうけど。

それでも、私に協力してくれる。


「ちゃんと息出来る?なら、頑張ろう。ここで頑張れば、会長と婚約破棄出来るんだろう?」


そうだ。

ここが踏ん張り時だ。

会長が私を断罪して、婚約破棄。

そして、ヒロインとハッピーエンドなのだから。


未だ小刻みに震える身体。

溢れそうな涙。

それらを抑え、唇を噛み締め婚約者である生徒会長を睨む。


さぁ、最後のセリフ…。

高笑いしながら、ヒロインを罵るの。

頑張れ、頑張れ私。


自分を奮い立たせながら、口を開こうとしたけど。

その時に、見てしまった。

私に集まる会場中の視線の数々を。

そして、ブラックアウト。




あぁ、物語、進めないと…いけな…い…。



※※※※※※※



「…どういうことだ?」


学園の保健室。

僕は倒れた姉を運び、ベッドへ寝かせた。

その時何故か、姉の婚約者の会長も一緒にきてしまった。

全く、忌々しい。

会場で姉の言うところの、ヒロインといちゃいちゃしていれば良いものを。


「今日は姉さん、ちょっと体調が悪くて。ご心配かけてすみません。ここは僕が見てますので、会長は戻られても大丈夫ですよ。」


舌打ちしたいのを抑え、当たり障りのない事を答える。でも、本当の事は教えてあげない。

聞きたい事はわかってる。

今日の姉の変わりようだろう?

いつもは、氷の女王様よろしく、誰とも打ち解けず、冷たい視線で周りを威圧していたのだから。

でも、それはフェイク。

姉は極度のあがり症。

人の視線が怖くて、人との関わり合いを持たないようにしていただけ。

恐怖に負けないよう、力を入れた結果、睨んで威圧しているようになってただけ。


本当は、臆病で、僕が居ないとダメな姉さん。

怖いくせに、懸命に震える身体を叱咤して。

でもやっぱりダメで、僕に縋り付く。

なんて、可愛いのだろう。

前世がどうのって話を打ち明けられた時には、ついに気がふれたと思ったけど…。

それで、親が勝手に決めた婚約を破棄するって言ったから。

僕は手助けする事にしたんだ。

無事に婚約破棄出来たら、僕がずっと姉さんの面倒を見てあげるからね。

人の視線に晒されないよう、部屋で飼ってあげるから。

甘美な未来を思い浮かべ、未だ眠る姉の頬をするりと撫でた。


「姉さん…ううん、葵。愛してるよ。」



※※※※※※※※※※



アレと俺は幼い頃から婚約していた。

所謂、政略結婚だ。

今時、政略結婚とか古いと思われるが、そう言う家柄に生まれたのだから受け入れるしかない。

特に今まで不満は無かった。

アレも外見だけは人形のように素晴らしいものだったし。

横に飾りとして置いておくには問題無い。

周りを威圧する様な、冷たい態度と、俺が退屈しのぎに親しくしていた女生徒に対する本当にくだらない虐めらしきものに対しては、呆れていたが。

ただ、それだけだった。

しかし、今日のアレは…。


小刻みに震える華奢な身体。

透き通りそうな程、白い頬。

今にも泣き出しそうに潤む瞳。

キツく噛み締められ、薔薇色に染まっていた唇。


ぞくぞくした。


いつもツンとすましていたアレが見せた表情。

もっと、見たい。

震える身体を抱き寄せ、縋り付かせて。

鳴かせたい。


今まで感じたことが無いこの高揚はなんだろう?

嗜虐趣味は無いと思っていたのだが。


…。


アレの弟が会場で今日婚約破棄させるとか、訳のわからないことを言っていたが…。

まぁ、いい。

こちらから、婚約破棄を提示しなければそのまま、結婚となる。



「葵。その日が楽しみだよ。」



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