黒野伊織の場合 その1 10
第十九節
「会話が弾まないのは仕事なんで構わないんですけど、ボクというかボクらに何か敵意があるみたいで…」
「…何か言われた?」
「黒野さんってメタモルファイト大好きなんですか?」
「ま…そうだね」
「お仕事は何をなさってるんです?」
「これよ。アーバン・スイーパーズ」
「…」
「そっか…分かりにくいか…」
間を取る皇。
「あんたがた健全な…前途有望、意気揚揚、前途洋々、明るく輝かしい未来に何の疑問も持ってない若者である高校生には分かりにくいかもしれないけど、あたし含めて社会のはぐれ者集団だからね。ウチの連中ってさ」
「はあ…」
「彼女も色々あった方でね」
「差支えなければ教えてください」
「一つ言えるのはあたしみたいに、この組織が無かったら生きていけないタイプってこと」
「…」
「恋人を失って自棄糞になって暴れてるのを保護したのよ」
「…もしかしてお亡くなりに?」
「いや、生きてるよ」
「何があったんです?」
ふう、とため息をつく皇。
「伊織たんもある日突然能力が覚醒したタイプでね。とにかくバイク好きでどこへでも行っちゃうタイプだから危ない目に遭ったりすることもあったらしいの」
それでライダースーツか…この能力らしい。
第二十節
「野宿してたら暴漢に襲われそうになって…見事撃退出来たらしいの」
「そういうこともあるでしょうね」
女性のメタモルファイターは「貞操を守るため」に能力が覚醒するパターンは多い様だ。
「その時は自覚が無くて、夢かなんかだと思ってたみたいなの。そうそう使うほど治安も悪い国じゃないし」
「はあ」
「でも…ある時付き合ってた彼氏とケンカして…怒鳴り合いの果てに怒って馬乗りになって殴られた時に…咄嗟に能力を使う形になっちゃったらしいの」
思わずガタリと立ち上がる群尾。
「…それってもしかして…」
「そ、彼氏はそれっきり二度と男には戻れなくなっちゃったわけ」
色々なことに合点が行って来た。
「その後は半狂乱ね。ウチの組織に拾われるまで随分暴れたみたいよ」
そんなことがあったのか。
「…カップルに絡むのはもしかしてそのせい?」
「…だろうね。悪かったわ。普段は愛想無いけどいい子なんでついね」
「いえ…それはいいんですけど…。メタモルファイトジャンキーみたいなことは言ってましたけど」
「そう言えるでしょうね」
皇が座り、合わせて群尾も座った。
「ウチにも何人かいるからさ。メタモルファイター。お互いに腕を競うことは別に構わないもの。怪我したりしなければ」
「強いんですか?」
「かなりね」
あの殺気ではそれだけで圧倒されそうだ。




