黒野伊織の場合 その1 07
第十三節
気が付くといつの間にか黒野の姿は無かった。
瑛子と群尾は皇に案内されて地下室を降りて行く。
「…広いですね」
「入口はね。地下にあるのは当局に居場所を勘付かれないためだけど…どうかな」
階段にエレベータ、廊下と複雑に歩き回った。
これが正規ルートなら迷ったら二度と脱出できないだろう。
「あいつらってどうなるんです?」
あいつらとは、当然先ほどのいじめっ子軍団だ。
いや、“いじめ”などというレベルを越えている。集団暴行・傷害の現行犯だ。
だが、こと「学校内」となると全てが治外法権である。子供がやったことならばどれほど残虐なことが行われていようと全て無罪放免となる。
それどころか、そうしたことが行われていたことそのものが認められない。
人を殺してすら無罪放免なのだからそれ以下のことなどやり放題に決まっている。
「どうなると思う?」
何故か楽しそうな皇の表情。
「ボコボコにすんだよな?とりあえず縛り上げといたけどよ」
「一部始終を御覧に入れるわ」
準備は早かった。
一切窓の無い部屋の真ん中に粗末なパイプ椅子が置かれており、いじめ首謀者の三人組が縛り付けられてうなだれている。
それをマジックミラー越しに観察できる部屋が準備されていた。
こちらの椅子はそこそこいい椅子だ。
「特等席だよ」
第十四節
「今日はちょっと早回しで行こうか」
皇がどこかに向かってマイク越しに指示を出す。
すると、特撮番組の戦闘員みたいなのが出てきて、三人組の顔面を殴打し始めた。
「ほ~」
「…っ!…」
瑛子はニヤニヤしながら眺めているが、群尾は例え彼らが加害者であってもパンチが顔面にめり込むたびに「ビクッ!」としてしまう。
ひとしきり殴った後は、今度は蹴りが入り、泥水のぶっかけから冷水のフルコース。
次に虫の死骸が持ち込まれ、羽交い絞めにした連中の口の中に押し込み始めた。
哀れボロボロになった三人組は顔面をぐしゃぐしゃにしながら泣いて嫌がっているが、こんなものは彼らが毎日やっていたいじめフルコースに比べてもまだ甘い部類なのである。
因果応報、同じ目に遭わされているという訳だ。
「なるほどね」
「これは…強烈ですね」
そうとしか言い様が無い。そして、同情の余地のない人非人ども、人の心を持たぬ極悪人の卵であると分かっていても人がここまで痛めつけられているのを見るのは愉快なことではない。
「気分が悪くなってきた?」
「…まあ」
「じゃ、この辺にしとこうか」
「もう終わりですか?」
「あんたがたに見せるのが終わりってこと。まだまだ続くよ?」
何故楽しそうなのか。




