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黒野伊織の場合 その1 04


第七節


「誤解していらっしゃるみたいですけど…」


 意外そうな顔をする伊織。


「ボクらはメタモルファイター同士の果し合いなんかには興味ありません。現場で不幸にも遭遇することはあるかもしれませんが、基本的に困ってる人を助けに一般人の悪い人をやっつけに行くんです」

「…相手が『悪いメタモルファイター』であることは考えないの?」

「そういうこともあるかもしれませんけど…そうなったらボクらの手には負えません。逃げるのみです」

「へー逃げるんだ」

「そりゃ逃げますよ。こちとら素手で、メタモルファイターはマシンガン持ってる様なもんです。戦闘力で比較になりません」


 また気まずい沈黙が訪れた。


「逃げられなかったら?」

「その時はその時です」

「ウソだね」

「ウソって…」


 そんなことを言われてもどうしようもない。


「十七歳の男の子が彼女の妙な趣味に付き合わされて、なりゆきで女の子になっちゃってもいいなんて言う訳が無いわ」

「別になりたい訳じゃなくて、なっちゃったらなっちゃったで仕方が無いって話です」

「あなた変態なんじゃないの?」


 口調がキツくなってきた。


「女装したことは?」

「ありません」

「してみたい?」

「いえ…特には」

「ほら、ウソだ」



第八節

「ウソって言われても…」

「あなた本当は女の子になっちゃってもいいなんて思ってないわ」


 リアクションに困る。何といって反論すればいいのか。


「知らないみたいだから教えてあげる。メタモルファイターは練習次第でそこまで危機感を感じなくても相手を性転換する能力を発現出来るの」

「…そう…なんですか?」

「あら、本当に知らないんだ」


 マジで知らなかった。


「メタモルファイトをする上では不必要だし、そういう意味じゃああんまり鍛えても鍛え甲斐のない能力だからみんなあんまり鍛えないだけでね」

「…」

「ところでたくやくん、瑛子ちゃんは好き?」


 頷いた。


「愛し合ったことは?」

「…何度か」


 その意味するところは明白だ。


「なら好都合だわ。たくやくん、瑛子ちゃんって怒ると怖いのよね」

「…かなり」

「あたしってさぁ…こうやってオブザーバーってんで便利要員で現場にまわされちゃってんだけど、…実はメタモルファイトが大好きな方でね」

「…はぁ…」

「どうせやるならスポーツみたいな生温なまぬるいこと言ってないで、本気で怒った相手とやってみたかったりする訳よ」


 どう考えてもヤバい雰囲気だ。


「もしも…たくやくんをこの場で女の子にしちゃったとしたら…瑛子ちゃん怒るかしら?」



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