来葉 龍の場合 その2 10
第十九節
来葉以外の全員が目をぱちくりさせていた。
「…?!!?」
「あ…あ…」
そこには朱色も眩しい晴れ着姿の娘がいた。「振り袖」と言う奴だ。
「…あきら?」橋場。
「みたい」真琴。
余りの展開に茫然として自分の手を見ている晴れ着娘(武林)。まるでお正月か七五三か卒業式である。
髪も日本髪に結い上げられ、簪なんぞが差し込まれ、飾りがぶら下がって揺れている。
よく見るとうっすらと唇が紅い。軽くメイクもされている様だ。
「どうなってんだこれは!一体何種類能力を持ってやがるんだ!」
思わず大声を出す橋場。
次の瞬間だった。
「危ないアキラ!」
「…っ!!」
両脚をぴたりと揃える形にならざるを得ない振り袖姿の娘に対して腰を低くしたタックルを仕掛けてくる来葉。
相撲試合には最悪の相性だ。
「くおっ!」
ガニ股になって踏ん張ることも難しい。一瞬で吹っ飛ばされかねない。強引に言えばこれはTだ。
次の瞬間だった!
第二十節
尺取虫の様に身体を縮小させ、ひねり、実質一本足状態で体重移動から脇に向かって振り袖娘が飛んだ!
同時に両手を相手に向かって押す!
これは攻撃と言うよりも苦し紛れの防御である。
だが、姿かたちは花も恥じらう和装乙女になっていようがメタモルファイターの能力は失っていないらしく反動で全身が浮き上がるほどの打撃となった。
しかし、これが命取りだった。
両脚が束縛されて空中でバランスのコントロールが出来ないこともあり、なすすべなく空中に放り出される形となった武林は、コンマ数秒とはいえ宙を泳ぎ、そして着地した。
…ガニ股で。
「ええええええええーっ!?」
また場内を悲鳴が覆った。
「…これは…この変態野郎が!」
何とも可愛らしい声で凄んでみても迫力が全く無い。そんな可愛い制服姿ではね。
…そう、そこにいたのはクリーム色のベストに校章が縫い取られ、赤いリボンにチェック柄のプリーツミニスカートからカモシカの様な脚線美の大半をむき出しにした「女子高生」がいたのである。
…言うまでも無く武林光の変わり果てた姿だった。
「土俵を割ったな。オレの勝ちだ」
「…っ!」
通学用と思しきスニーカーを履いた白いソックスも健康的なその足元は確かにチョークのラインを割っていた。




