来葉 龍の場合 その2 09
第十七節
「変身の解除等に条件は無し。終わったら戻れます。一本勝負!ではレディ…ファイト!」
行司…もとい、ジャッジである綾小路が飛びのく。
武林は珍しく両手を上げてボクシング…いや、キックボクシングの様に構えている。
相撲相手に重心を高くするのは賢明とは言えない…が、相撲に付き合う気は無く、あくまでも打撃でダメージを与えて勝つつもりらしい。
一歩踏み込んでの正拳突き。
どうにかブロックしたがふらふらと後方によろける来葉。
恐らく今の一撃にもメタモル能力は全く乗せられていないだろう。
左ミドルキックがブロックされ、更に一歩踏み込んで今度は右足のローキック!
「…っ!!」
純粋な土俵サイズよりは大きいが、決して広いとは言い切れないフィールドを必死に逃げる来葉。
心なしか脚を引きずり始めている。
「…すごい」
そうなのだ。まあキックボクシングまがいの蹴り技も混ざってはいるが、これが本来の空手家の強さである。素人が格闘家のローキックなんぞ食らえば下手すりゃ一撃で骨折。そうでなくても当分立ち上がれないほどの大ダメージとなる。
演武で板を蹴り割ったり、木製バットをへし折っているのは伊達ではないのだ。あれが人間の脚を直撃すると考えてもらえば分かるだろう。
第十八節
メタモルファイトには体重も筋力も関係ない。格闘技経験があるからメタモルファイトに強い訳ではない。
だが、「コツ」はある。間違いなく。
コンピュータゲームの「対戦格闘ゲーム」がイメージに近いだろうか。
筋力も体重も無くても子供が大男に勝つことが簡単だ。
その意味で「空手」によって身体の動かし方を熟知した武林は純粋な格闘試合となった段階でかなりのアドバンテージを得ているといえる。純粋メタモルファイトだとそれほど有利という訳でもないが。
「あ、やってますね」
橋場の横から声がした。
「…っ!!斎賀か」
「ただ今戻りました」
そこには膝下の豊かなスカートな上品な印象を与える「ボレロ」制服に身を包んだ斎賀健二…の変身後がいた。
「あ、かわいー。ってか髪長い?けんちゃん」
真琴が質問した。
「ええ。折角なんでヘアピースしました」
髪を触る斎賀。さっきはセミロングぐらいだったのがストレートロングくらいになって背中の真ん中まで到達している。さりげなく女装(?)に熟達し始めているのが怖い。
「うおっ!」
妙な声がした。
そして…土俵上では信じられない光景が展開していた。




