来葉 龍の場合 その2 03
第五節
「野郎…」
流石に見下ろしてしげしげと眺めつづけたりはしなかったが、ゆさっと揺らし、一瞬視線を送って自らの肉体に起こった変化を自覚する来葉。
完全に男の身体なのに、乳房だけが女のものであるこの違和感。
「…」
それほど広くない土俵で半身になって構えながら距離を保つ橋場。
こいつは一体何がしたいのだろう?
意識コントロールなんぞ何も知らなかった陸奥海斗という関西からの遠征までしてきたメタモルファイトジャンキーは、それでも猛烈な手数と衣装を活かした戦い方で結局橋場は破れている。
意識コントロールだけが勝敗を決める訳ではない。
だが、こいつは意識コントロールが出来ないのにそれに代わる「売り」がある様にも見えない。
ひたすら打撃を繰り出し、防御しようとしているところから見ると「接触」で発動する「基本形」だろう。
というかそもそも「特殊系」の存在すら知らないんじゃないのか。
にもかかわらず抵抗すら出来ていない。
確かに「接触部位以外を部分的に性転換させる」戦い方はしているが、そこに対して意識を集中して抵抗すれば多少は防げるはずなんだ。痩せても枯れてもメタモルファイターなんだから。
「…」
これは…一気に終わらせた方がいい。
幸い「変身決着」と有難いことを言ってくれている。
橋場は一歩踏み出した。
第六節
土俵の中央付近まで前に出てきた来葉の脇をフェイントを掛けて駆け抜ける形で全身を性転換させ、黒一色に白い三本ラインと真っ赤なスカーフのセーラー服姿にしてやった。
「悪いな。一気に決めさせてもらった」
くるりと振り返ってそう言って決める予定だった。
だが、くるり…の途中で違和感に気付き、そして何故か一気に下半身に空気が吹き込んできた!
ぶわり!と布が空気を孕んだ音を立て、目の前の視界を遮った。
同時に、絹を裂く様な悲鳴を上げながら橋場はそれを両手で身体の前に向かって叩き付ける様に抑え込んでいた。
「きゃあああああああ~っ!!」
「白…だな」
気付くと、更に背が高くなった来葉が見下ろしている。
「な…な…」
振り返る途中の違和感の正体に気が付いた。
首回りが暑い。身体の回転に従ってふわりと付いてきた長い髪の毛であり、全身を嬲るつるつるすべすべの女物の下着…肌着…の官能的な感触であり、そして何とも頼りない「スカート」の履き心地だったのだ!
自らの身体を見下ろす橋場。
「あああああーっ!?」
そこには形のいい球状に突き上げられた漆黒のセーラー服の三角襟に白い三本ライン、そして血の様に真っ赤なスカーフが鎮座しているではないか!
その先には安産体系にされた下半身に沿って広がるプリーツスカートが丸く揺れている。
一瞬、正に一瞬にして橋場は学ランの男子高校生からセーラー服の女子高生へと性転換&女装させられてしまったのだ!




