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盛田出人の場合 その3 06


第十一節


「…バミューダ・トライアングルって聞いたことはあるか?」

「そりゃな」

「飛行機や船が雨も風も吹いていない晴れ渡った日に突如かき消えたりする謎の消失現象が起こるとされていた三角形の海域の話…だ。八十年代には大いに話題になった」

「そうだな」

「ところが時代が遥かに進んで、より飛行機が通る現在じゃほとんど話題に上らない」

「…うん」

「何故だと思う?」

「まあ…ロマンはあるけど事実じゃなかったってことか」

「まあな。じゃあどうしてあの時期にまるで示し合わせたかの様に『同じような状況証拠』で『同じような証言』で謎の消失現象が頻発した?」

「それは…」

「きっと謎の消失現象だって、一件や二件だったらこんなに騒がれたりしないだろ。口裏を合わせようがないはずの全く別のシチュエーションであるはずの事件に『奇妙な一致』が頻発したとしたら…どうだ?」

「真実味があるな」

「結局この事件もそれが真相だよ。つまらん話だ」

「…?どういうことだ?」

「確かに時間も離れてるし被害者…とされている人々…にも共通点はまるでない」

「そうだな」

「だが、もしもこの被害者同士が似たような証言をしていたとしたら?」

「…薄気味が悪いな」

「そういうこと。きっとつまらん家出事件あたりが発端だよ。それこそ女装で発見されて口から出まかせで誤魔化したり、或いは失踪した女性が身分を隠すために家出人で見た男の子の名前を自称したりしたんだ」

「女性が男の子を名乗るのか?無理があるだろ」

「ウソは大きければ大きいほどいい。とある詐欺師の言葉だよ。中途半端な真実味のある「設定」よりも、荒唐無稽なくらいの大嘘だと「つくならもっとマシなウソを付くだろう」とかえって信憑性が出てくるもんらしい」



第十二節


「まあ、最初のきっかけがそうだったとしてもその後の事件はどう説明する?」

「簡単だ。前の事件を模倣するんだよ」

「模倣?」

「女なのに元・男の子を名乗ったりすれば『頭がおかしい』と思われるかもしれないが、一方で『トンデモナイ事件に巻き込まれた可哀想な犠牲者』という立場になれるかもしれない」

「む~ん?」

「しかも授乳中だったんだろ?」

「そうだな」

「ってことは未婚の母だ。どっかでこしらえた子供を世話してて保護されただけだ馬鹿馬鹿しい」

「じゃあ、失踪した男の子や男たちは?」

「だから失踪なんて日常茶飯事なんだよあの国じゃあ。だからちょっと調べれば都合のいい人間なんて幾らでも見つかる」

「それにしても、もしオレが二十代の未婚の母だったとしても失踪した六十五歳の大学教授のじいさんを自称したりはしないなあ…」

「だから言ったろ?ウソは突拍子もない方がいいんだって」

「この事件が2年ほどで収束した理由は?」

「神通力が切れたのさ」

「神通力」

「そう。幾らなんでも設定的に無理がある。オカルト世界にだって流行も流行り廃りもあるんだ。だからある程度でぴたりと収束した。以上!証明終わり(Q.E.D.)だ!」

「…」


 考え込んでいる盛田。


「…何だよ。何か反論があるのか?」

「その割には妙なことがある」

「だから何だって」

「まず、見つかった犠牲者が常に同じ服装だったこと」

「バイアスが掛かってるんだって。オカルトの報告じゃあ良くあることだ」



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