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盛田出人の場合 その3 03


第五節


「え…」

「何だよこれは。これだけじゃ何が何だかさっぱりわからんだろが」

「続きを読んでくれ」

「えー何々?彼女たちは一様にマタニティルックに身を包んでいた」

「不思議だろ?」

「アメリカじゃマタニティルックってのはそこまで珍しいのか?」

「謎の女全員ってのが気にならんか」

「ならん」

「置き去りにされた女全員がマタニティルックである確率は天文学的に低いだろ」

「…彼女たちは全員妊娠してたとでも?」

「いや、だが経産婦だったのは医学的に間違いないらしい」

「つまり、子供を産んだことがある身体だったと」

「左様」

「…男が子供を産んだってんなら大事件だが、女が子供を産むのがそんなに大事件か?」

「彼女たちは全員、授乳の真っ最中に発見されている」


 しばし沈黙。


「…つまり、赤ちゃんにおっぱいあげてた…ってことでいいか?」

「その通りだ」

「オレの認識だとそれほど珍しくないんだが」

「その赤ん坊は不思議なことにいざ母子ともに保護しようとすると煙の様に消えてしまったらしい」

「ふ~ん」

「そして、この事件は2年ほどで完全に起こらなくなる」

「特定の期間に集中的に起こったってことか」

「そう」

「…そろそろ怒るのも疲れてきたんだが…どの辺に事件性があるんだ?」

「女性たちが揃いも揃ってその前後の期間に行方不明となった人物を自称していたとしたら?」



第六節


「エイミー・ナンシー。十七歳。高校生。部活動の帰りにバス亭で行方不明となり、赤ん坊に授乳しているところを保護される」

「…エイミーってことは女か」

「そう。自己申告だが男性との経験は無し。しかし医学的知見だと経産婦だ」

「まるでギリシャ神話だ」

「え?マリア様の処女受胎じゃなくて?」

「それでもいいんだが、ゼウスは相手に気付かれない様に妊娠させる技を持ってたらしい。正に『神業かみわざ』だ」

「うまいねしかし」

「漫才か。しかし何故経産婦なんだ?」

「そりゃ、赤ちゃん出来てないとおっぱい出ないからな」

「…そっか…。って話が逆流してないか?」

「妙なことにエイミーの身体は成熟しきった二十代のそれだったらしい」

「つっても個人差があるからなあ」

「次、アレクサンドル・ボルジア。三十六歳。地方検事補。プライベートな旅行中にバス亭で行方不明。同じく赤ん坊に授乳しているところを保護された」

「愛称アレックスってわけね。女か?」

「そう。日本人だとアレクサンドルとかアレックスだと男か女か分からんが、まあ女性。地方検事補だから公式に写真がある」

「…こりゃまた美人だな」

「ギリシャ彫刻は言い過ぎでもマネキン人形かモデルみたいな美女だ」

「出産経験は?」

「こちらは一応ある」

「一応ってのは?」

「妻子ある検事のおっさんとの不倫で身ごもり、堕胎してる」

「あれあれ」

「ただ、純粋な出産は未経験…のはずだが授乳はしてた」

「次行くぞ。デニス・カッター。十八歳。高校生。夏休みを利用してのきままな旅行中に行方不明」

「…ちょっと待て。デニス?」

「ああ。デニス」

「デニースじゃなくて?」

「そう。デニスだ」

「男の子だよな?」

「やっと事件らしくなってきたな」



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