盛田出人の場合 その3 02
第三節
「多民族国家で訴訟社会だ。結婚したカップルの3組に1組は離婚する。次に待ってるのは子供の取り合いだ」
「ギスギスして来たな」
「ああ。親権裁判で敗れて合法的に会えなくなった親が子供を非合法的に手に入れるには…さらうしかない」
「無茶な」
「無茶が通れば道理が引っ込むってな。常時数人以上の逮捕されてないシリアル・キラーがうろついてる国だ。同じ基準でロリコン・ポルノの規制をアメリカに言われたくないね」
「いや、その話とは違うだろ」
「この話は長くなるんでここまで。とにかく、戸籍すらない国で行方不明者が数人出てる事件がありますっつったってまともな捜査なんぞ行われてるんだかサッパリわからん」
「普通にやってるだろ」
「じゃあ、O・J・シンプソンの奥さん殺したのは誰だよ」
「オレが知るかよ」
「マジな話、行方不明者の特定はどうやったんだよ?」
「えっと…」
ペラペラと書類をめくる盛田。
「こんな話聞いたことないか?辺鄙な田舎を車で走ってて、人気のないガソリンスタンドがあったんで入ってみる。奥さんがトイレに入ったが延々出てこない。仕方が無いんで店番の男に「妻を知らないか?」と訊いてみた」
「…それで?」
「店番はこういうんだ『あんたは一人で来たよ』ってな」
「…アメリカの怪談か?」
「いや、クライブ・バーカーの小説だ」
「あのなあ!」
「これだってバーカーの創作じゃなくて『消えるヒッチハイカー』とか『試着室の〇〇〇女』みたいな都市伝説を下敷きにしてんだよ」
「ああ思い出した!これだこれ!」
書類を差し出して来る盛田。
第四節
「…なんだこれ?」
「この行方不明事件が他の行方不明事件と明確に違うのはこれさ」
「だから何だって」
埒が開かないので書類を盛田から取り上げる巣狩。
矢鱈に細かい文字でしかも英語なので苦労する。
「…謎の女が出現?」
「そう!それなんだよ」
「そのパターンは余り聞いたことが無いな」
「都市伝説じゃなくて事実だからな」
「アメリカの警察も匙を投げたって?」
「いや、すまんがこれFBI事件じゃなくてオハイオ州警察の事件なんだ」
「…お前、『夜の大捜査線』とか観たことは?」
「なんだっけそれ?ドラマから映画になった奴だっけ?」
「多分お前が言ってるのは『踊る大捜査線』だな。そうじゃなくて、シドニー・ポワチエの映画だよ」
「全く知らん」
「…あれを見る限りアメリカの地方警察なんぞ近所の居酒屋みたいな感じだぞ」
「いや、そんなことないだろ」
あくまで映画を観た感想だが。
とにかく、報告書によると最初この事件は「行方不明事件」ではなくて、「身よりの無い謎の女が出現する」事件として認識されたらしい。
「…彼女たちは一様に良く分からない言動に終始…か」
「な?不思議だろ」
「確かに不思議だ」
「遂に認めたか」
「こんなしょーもない報告書が残ってたことにな」




