来葉 龍の場合 その1 08
第十五節
本来ならここで「はっけよい、のこった!」と言うべきなんだろうが、何か負けた気がするので普通に始めることにした。
「ではいきます。レディ…ファイト!」
同時だった。
「きゃーっ!」
絹を裂く様な悲鳴がして、真っ黒なスカートが舞い上がり、内側の白い肌着…スリップと肌色の下半身、そしてレースに彩られたパンティが見えていた。
舞い上がるスカートを空中で叩き付ける様に押さえつけ、茫然と立ち尽くしていた。そこにあったのはかなりの高身長の女子高生が、セーラー服に身を包んでいる姿だった。
「はいおしまい」
真琴はポケットから手を出してすらいない。
「カレシのお返しね。寒かったでしょ?」
どうやらスカートをめくり返して「かたき討ち」をしてくれたらしい。
すっかり女に…美少女になった来葉はかなり印象が異なった。
分厚い胸板も広い肩幅も、なで肩に薄い身体に生まれ変わっている。面影を残しているのは高い身長くらいか。
男が女装させられた姿とも違う、見ている側としては何とも言えない居心地の悪い、女としては何一つ瑕疵の無い美貌がそこにある。
「じゃ、悪いんだけどデートは無しで」
第十六節
「ちょ、ちょっと待ったぁ!」
初めて聞く来葉の女声がした。
「あに?往生際悪いよ。男でしょ?」
強烈なイヤミである。
「そうだ。変身決着なら終わりだろ?」
「分かった。分かったからもうあと一勝負だけしてください!」
顔を見合わせる真琴と元に戻った橋場。
「いや…悪いけど何度やっても同じだよ。大体、勝負に負けた側が再戦を申し込むってのは不可解しいだろ」
「リスク負います!諦めきれないんでもう一勝負だけ!」
「リスクって何?」
相手をしてやらんでもよさそうなもんだが、一応訊く真琴。
「次の勝負に負けたらもうすっぱり諦めます!」
「お前さっきの勝負は違ったのかよ」
少し考えている真琴。
「…違うね」
「何だって?」
「さっきの勝負はあくまでもデートを賭けてのもんでしょ?これからやる勝負はもうデートのお誘いから何から全部諦めるってことだよね?」
「はいそうです!お願いします!」
腰を90度折り曲げて動かないセーラー服姿の来葉。
「ま、いいわ」
「おい真琴!」
「本当ですか!ありがとうございます!」




