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リチャード・ケイジの場合 04


第七節


「C&F法律事務所」


 どうやらこのビルの5階と6階の全てがその法律事務所らしい。かなり大きい。


「いらっしゃい。C&F法律事務所へようこそ!ご予約はありますか?」


 受付の若干そばかすが目立つ美人がにこやかに応対してくれた。

 流石にカウボーイハットにデニムの風来坊スタイルではボストンにふさわしく無かろうと、ビジネススーツではないが、サラリーマンが休日に来ていても不可解おかしくは無い程度に買い揃えたカジュアルな装い…なのでお客だと思ったんだろう。


「いや、予約は無いんだ」

「はい、ではどの様なご相談でしょうか?相談料は1時間で200ドルになります」


 いきなり金の話か…1時間で200ドル(約2万4千円)!?…こりゃあハードルが高そうだ。相談しただけでその額となると依頼したりしたらどうなることやら。


「えーと…責任者の人はいる?」

「CEOのリチャードは現在会議中です」


 リチャードというのか。


「そう、ならここで待つよ」

「…?個人的なご予約ですか?」

「そう…紹介があってね」

「あ、なんだ!ご紹介ですか。紹介状はありますか?」


 これまで出会ったアメリカ人の中では最も丁寧ではあるが、それでも過剰にフレンドリーなのはどうしても気になってしまう。


「…すまん。紹介状は無いんだ。名前を出すだけでいいと言われたから」


 少し考え込んでいる受付嬢。


「あなた、ちょっといいかしら?」

「?」

「名前は?」

「…シンと呼んでくれ。それで通ってる」


 何故か周囲をキョロキョロと見渡す。


「リックに個人的な依頼なの?」


 ひそひそ声になった。リックというのはリチャードのことだろう。



第八節


「そういう訳じゃ…友人からの紹介だって」

「弁護や訴訟の依頼じゃないの?」

「ああ。会いに来ただけさ」

「あなた…シンってリックに会うのは初めて?」

「そう」


 また考えている。


「ウソおっしゃい。何かで訴えられて慌てて飛んできたんでしょ?」

「違うって」

「悪いこと言わないから他所よそで裁判起こした方がいいわ」

「何だって?」


 ここで電話が鳴り、受付嬢は綺麗に応対し、そして受話器を置いた。


「確かにリックは凄腕の弁護士だけど…依頼料は高いわよ」

「依頼じゃないけど…参考までに幾らくらい?」

「事件の内容によるけど…安くても1割ね。前払いで」

「はあ」

「規模は?」

「あなた新聞読む?」

「この頃は余り」

「この間1億ドル(約120億円)訴訟に勝ったばっかりよ」

「…聞き間違いじゃないよな」

「そう。その1割」

「ってことは…1,000万ドル(12億円)か」

「もめにもめたけど、最終的には報酬は3割、必要経費も請求したわ。追加分は後払いだったけど」

「なるほど高そうだ」


 癖でカウボーイハットを直しそうになる。かぶっていないのに。36億円にプラスアルファかあ…それって収入とか言う話なのかね。


「あと、ウチは民事専門だからね」

「ほう」

「ていうかセクハラとか男女関係の訴訟ばっかり。表だって掲げてないけど弁護士界隈はみんな知ってるわ」


 また妙なところを紹介してくれたもんだ。メタモルファイトで女にした相手に「セクハラ」で訴えられた備えでもしろってのかね。

 「メタモル能力で相手を女にしたけど正当防衛だから無罪」とか。ん?これだと刑事になるか。


「会議中って言ったな」

「ええ」

「どのくらいかかる?」

「ウチは会議早いからそんなには…ちょっと待って」


 受付嬢が思い出したように手元を漁っている。



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