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来葉 龍の場合 その1 02



第三節


 どうにか咄嗟に「いなす」橋場。

 かなり驚いたが、メタモルファイターの反射神経があれば直撃を喰らったりはしない。

 いなすと同時にメタモル能力を打ち込んだ。


「…っ!?」


 体制を整えて向き直り合う2人。来葉が怪訝な顔をしている。

 橋場のカンが早期決着を促していた。


「ふっ!」


 踏み込んで相撲で言うところの左手の「張り手」と見せかけて対角線である右足でキックを見舞う。

 張り手をはたき落とすことに意識が行っていた来葉はモロに蹴りを喰らった。

 といっても橋場は格闘家でもないし、いつもつるんでいる武林 ぶりん・あきらの様な空手家でもない。格闘家の放つ「ローキック」ではなくて「単なる蹴り」だ。


 だが、当たったのは足なのにまずは髪の毛を伸ばしに掛かる。

 初歩の初歩だが、「意識コントロール」だ。


 当然すぐに距離を取る。


「…!?」


 やはり怪訝な顔をしている来葉。

 こいつ…もしかして意識コントロールを知らない?



第四節


「…なんか面白そうな小細工使うじゃねえか」


 もう髪が長くなっている。良く言えばロングヘアのプロレスラーかまげを解いた力士、悪く言うと勘違いしたヒッピーってところだ。

 ただ、勘違いしたヒッピーならその長い髪は枝毛だらけのぼさぼさだろうが、まっすぐに伸びた緑なす黒髪が日々の手入れとシャンプーを欠かさない状態で垂れ下がっていることになっている。この表現が適切かどうか分からないが、正に「女の子の髪」である。


 橋場は間髪入れずに次の攻撃に出た。

 どうもおかしい。これだけ自信満々で何か格闘技の「心得」がある気配むんむんにもかかわらず、少なくとも「メタモルファイト」形式…相手を能力によって性転換・女装させる…に全く無知で未熟であるとしか思えないほど技量が足りていない。


 メタモルファイトは「メタモルファイターならば終われば元に戻れる」ことが分かった段階である程度ハードルが下がる。

 そして更に慣れると今度は心理的ハードルが上がる。

 相手がどんな能力や衣装なのかもわからない場合、よほど実力に自信がある状態でないとこちらから仕掛けることなど考えられない。

 何しろ勝ったところでこれと言って得るものの無い戦いなのだ。橋場などは出来れば避けたいところだった。

 にもかかわらずこいつは一目で挑んできた。


 同じ様なフェイントで下段を蹴り払う…様に下方向に視線を誘導して脇腹をタッチする。

 頭を警戒したようだが、今度は胸を大きくしてやった。


 来葉の学ランの下に豊かな乳房が盛り上がる。



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