リチャード・ケイジの場合 43
第八十五節
「原理的には一応そうだが、オレは味方だぞ?それに生き方を束縛したりはしない。存分に人助けしてくれ」
理解してくれている様だ。
「とりあえず宿は引き払っちまいな。荷物も移せ。風来坊に部屋を提供することを承知はしてるが、せめて一泊くらいしろよ」
「…そうさせてもらう。キッチンとかもあるんだろ?」
「ひと家族住める。しかし、食材買ったって使い切れんだろ。デリバリーにしとけ。近くに上手いピザとチャイニーズの店がある」
「本当にアメリカ人ってピザ好きなんだな」
「手軽で美味いからな。ボストンはビジネス街でもある。外食も充実してるぞ。スシの美味い店も沢山さ。ニューヨークほどじゃないが」
「しかし、弁護士みたいなセレブがピザみたいな庶民のファーストフード食うのか?」
「馬鹿言うな。ホワイトハウスですらピザの出前が当たり前なんだぞ?こちとら移民の国だ。そういうスピリットは失ってねえよ。それこそ朝から晩まで一流レストランでフランス風高血糖料理流し込んでんのは資産家のボンボンかパリス・ヒルトンかアンナ・ニコル・スミスくらいのもんだ」
「…ま、そうだな」
生粋のアメリカ人らしいダニーも同意の意思を示す。
シンはスマホをいじってみた。
英語仕様なんでちと梃子摺ったが、まあどうにか使いこなせそうだ。
「次はどこに行くんだ?」
「…ニューヨークかな」
ボストンからニューヨークなら車で1時間も掛からない。
「何しに行く?モデル業か?」
「(苦笑)…ならいいがな。メタモルファイター探しさ」
「シンお前…」
第八十六節
「幾らオレでも衣食住面倒見てもらってほっつき歩いてるだけってのは気が引けるからさ。もしも出会うことがあったら声かけてみる」
「ありがとう!」
リチャードが大声あげて立ちあがり、同意も求めずにこっちの手を取って勝手に握手する。
「お、おう…」
「しかし、そんな条件を飲む相手がおるかね」これはダニー。
スーツで決めた紳士淑女が集う生バンドのライブが行われているバーなんぞ、おごりで無ければ一生入らん!と繰り返していたが、アルコールが入ってやっと肩の力が抜けてきたらしい。シャイなアメリカ人っているところにはいるんだなあ…とシンは思った。
新しい目標が出来たシンは決意を新たにした。
シンタロウ・オガタ メタモル・ファイト戦績 十五勝五敗一引き分け一無効試合 性転換回数十二回
ダニー・リード メタモル・ファイト戦績 五勝0敗0引き分け0無効試合 性転換回数二回




