リチャード・ケイジの場合 39
第七十七節
「あのな、分かってると思うがメタモルファイトにゃ必ずしも変身は必要ないんだぞ?」
「百も承知さ」
「こいつが見たがってるのはレズのキャットファイトだ!」
「いかにもその通り!」
胸を張るリチャード。いっそ清清しい。
「プロレスじゃねえんだ!“魅せるため”でもなきゃ高速の殴り合いでしかない」
「…まあ…な」
「じゃあこういうのはどうだ?確か試合条件に条件を付けることが出来るんだよな?」
「シンお前…メタモルファイター以外にペラペラ喋るなよ!」
「…すまん。パトロンには逆らえなくてな」
この時のダニーの言葉は後で思い知らされることになる。
「相手を性転換させ、女装させた後、胸部分を破り取っておっぱいを露出させた方の勝ち!題しておっぱいデスマッチってのはどうだ!?あん?」
メタモルファイター二人が頭を抱えている。
「おっぱいじゃ足らないか?それなら全裸に剥くすっぽんぽんデスマッチ…」
「「もおいい!」」
二人の声がハモった。
「リチャード…オレたちの能力は千差万別なんだ。その試合形式はちと難しいな」
「どーおして?面白いだろうが」
第七十八節
「当然相手に怪我をさせることは厳禁!当たり前だ。殴ったり蹴ったりも無し。相手にタッチさえすれば変身させられるんだろ?」
必ずしもそうじゃない「特殊系」がいるんだけどな…とは思ったが暫く喋らせることにしてみるシンだった。
「これはスポーツなんだよスポーツ!殺し合いじゃない!」
熱が入ってきた。場末のゲームセンターを法廷だと思っているのだろうか。
「普通の人間は性転換させられたりすりゃ大騒ぎ!どの穴がどうなんだかさっぱりわからず大パニックだ。でもキミらメタモルファイターは違う。試合が終われば元通り!そうだろ?」
「…まさかとは思うが、大勢の観客入れて興業にしようとかしてないよな?」
「まぁさか!こんな面白いもん、誰が他の奴になんぞ見せるもんか!オレ一人の娯楽だよ!」
若干イライラしながらダニーが聞いた。
「…選手のモティベーションはどう維持するんだ?」
「そんなもん幾らでも考えられるだろ!優勝賞金100万ドル(約1億2千万円)とかってのはどうだ?」
一瞬沈黙。
「…100万ドル!?」
「おいどうした?もう意欲が湧いてきたのかアーハァン?」
ぴくぴくと眉毛を動かして得意げのリチャード。
「…それって…税金とかどうするんだよ」
いらん心配をするシン。
「オレは法律事務所のシニアパートナーだぞ!心配いらん!税引して額面で100万ドル用意するに決まってるだろうが!」




