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リチャード・ケイジの場合 33


第六十五節


「シン!おいシン!どうしてくれるんだよ!」


 リチャードが頭を抱えている。そうなのだ。この試合はリチャードの性別を賭けての代理試合だったはずなのだ。


「ダニー…お前…強いな」

「やかましい」


 チアリーダーとバニーガールの会話である。シュールだ。

 手にポンポンを握らされていたこともこの段階になって初めて気が付いた。それほど一方的だったのだ。


「…ちょっと見せてもらってもいいか」

「好きにしな」

「折角だからお前もこっち来いよ」

「…いいよ」

「いいから!」


 右手のポンポンを左手に移し、右手で真紅のマニキュアだらけのダニーの左手を取って鏡の前まで引っ張ってくる。


「…っ!!」


 ダニーめ、今更ながら今の自分の格好を客観的に観て驚いてやがる。

 と、同時にシンは自らの「チアリーダー姿」をも見せつけられることとなった。


「…」


 なるほど、認めたくないが確かにこれは男なら劣情を催すスタイルだ。

 実はチアリーダーのユニフォームというのは、アメリカ人にとって80年代の日本人のセーラー服みたいな「性的アイコン」の位置づけなのである。

 大っぴらに描かれることこそ少なかったが、チアリーダーを性的に奔放に描くポルノなどは定番だったし、しばしばそうしたジョークの対象ともされてきた。


 シンは以前からその辺りが不思議で仕方が無かった。



第六十六節


 セーラー服だのスチュワーデスの制服だのをフェティッシュな目で見るのは…まあ、分かる。実際スカーフだのスリップだの黒ストッキングだのは分かりやすいフェチアイテムだからな。ブルマとかさ。

 しかし、「チアリーダー」…日本風に言えば「チアガール(和製英語)」…ってのの一体どこに欲情する要素があるのか…と思っていたのだ。

 フェチとは正反対の健康的で健全なイメージしかしない。


 だが、自らが身に着けるという変則的な形となりはしたが、『本物』を間近で見てみて、確かにこれはいやらしい…と感じざるを得ない。

 このフィーリングは上手く言葉にならないのだが。

 きっちり決まった上半身のデザインの見事さと下半身のスカートから伸びる脚のコントラストというか…上手く言えん。

 ユニフォームの上着と、短いプリーツスカートという取り合わせが余計に女性的に感じさせられると言うことなのか?


「…なるほどな。ダニー。お前の気持ちが分かったぜ」

「…」


 複雑な表情でこちらを見つめてくるバニーガール。


「もう言っても構わんと思うが、スクールカースト下位のお前があこがれ続けたのは…チアリーダーだもんな。しかも白人の。だからお前の能力は人種まで変えちまうんだ」

「ばーかな!何をいってるんだ!」

「お前は黙ってろ!」


 ポニーテールを振り回しながら首だけ軽く振り向いてたしなめるシン。

 だが、リチャードの視線が自分のお尻にくぎ付けになっていることは…気付いていたが無視する。


「ああ…その様だ」


 恐らくここまで来たならば相手の男を美味しく頂くところだったんだろう。哀れスクールカースト、学校における食物連鎖の頂点「クイーン・ビー(女王蜂)」たる「チアリーダー」の姿に変えられてしまった男どもを。

 だが、これはメタモルファイトだ。

 相手は元に戻る能力を持っているし、反撃を受けるかも知れない。


 何より、この場合だと自分自身も女…バニーガール…にされてしまっている。

 素直に男としての性欲が爆発したりはしない。肉体的に。



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