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リチャード・ケイジの場合 32


第六十三節


 そこには「西洋人形みたいな」ガラス玉みたいに透き通る青い目にため息の出そうな黄金のブロンド、そしてつるりとした美しい素肌の美女がいたのである。

 ダサい男物にナイスバディを押し込む形で。


「…おれ…白人女に…じ、人種まで変わってんのか…?」

「ああそうさ。オレの能力はそうらしい」


 バニーガールと成り果てたダニーが豊満なバストを抱える様に腕を組んで背を逸らしている。

 先日戦ったジョーは相手をバニーガールに変える能力持ちだったが、人種までは変えなかった。というより変えられなかったのだろう。

 だから色白ではあったが、紛れもないモンゴロイド(黄色人種)の黒髪の美女バニーとされたのだ。同じくシンの能力を喰らったジョーも白人の金髪バニーとなった。


 シンはメタモルファイトを望んで仕掛けて行くタイプではないのでファイト経験が豊富とは言えない。また、日本国内で戦うことが多かった。そのせいもあって、相手の人種まで変えてしまうメタモル能力というのは想定の外だった。


「どうだ?日本人の男に生まれて白人女になった気分は?」


 そう言われても答えようがない。

 だが、まだメタモルファイトの最中だ。こちらが圧倒的に優位であることには変わりがない。タッチしてしまえば終わる。


 何かが動いた。


 そこまではどうにか認識出来た。

 だが、次に認識出来たのは、自らの涼しい足元…下半身だった。


「あ…ええええええええーっ!?」


 シンの脚は完全にむき出しになっていた。

 ミニスカートを履かされていたのだ。


 それも、オレンジ色のプリーツの入ったミニスカートだ。

 ふちに白いラインが入っている。


 よくよく見るともう全身がオレンジ色だった。

 形のいいバストの上には何やらチーム名みたいなものの頭文字らしきものが縫い取られており、ノースリーブで腕が剥き出しになっている。

 ま、まさかこれは…。


「ち…チアリーダー…か」



第六十四節


 気が付くと長い髪はポニーテールにまとめられていた。

 正に「健康的なエロス」そのものといった風情である。

 運動選手の様でいて運動選手ではないその肢体は、バニーガールと成り果てているダニーほどグラマーではないが、かといってパリコレに出演するモデルほど痩せてもいない。

 むっちりと皮下脂肪がついた太ももは何とも色っぽい。


「これがお前の…の、能力…」

「おらおら!ぼーっとしてんじゃねえよ!」

「きゃああああああーっ!」


 一陣の風が吹き抜けた。

 やっと目が慣れてきたシンの目に飛び込んできたのは、バニーガールが風の様に一瞬で移動してシンのスカートをめくり上げるところだった。


 思わず全身の力が抜けてへたり込んでしまうチアリーダー…日本風に言うとチアガール…となってしまったシン。

 スカートの中のむき出しの脚が床に直接接触して冷たい。


「…オレの勝ちだ」


 正に一瞬の決着だった。


 普通ののメタモルファイトにおいては、相手の抵抗などもあり「気付いたら一瞬で女になっていた」といった形式は取れない。それが起こるのは「圧倒的に実力に格差がある場合」のみでしかありえない。

 そう、皮肉なことにおよそありとあらゆる分野において努力の甲斐なく一切の素質めいたものを感じさせないダニーは、ことメタモルファイトにおいてのみ「天才」と言っていいほどの凄腕だったのだ!



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