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リチャード・ケイジの場合 29


第五十七節


「最後はあれだ」


 恐らく自らの外見に自覚がおいついていないであろうバニーガールが細い指を指した。

 そこにはいかにもアメリカンなおどろおどろしいゲームが置いてある。


「…こいつぁ観たことが無いな」

「だろうな。アメリカでしか発売されてないマイナ―ゲームだ」


 それでアドバンテージを取ろうって訳だ。当然ではあるな。

 そのゲームに登場してるのは「異形の怪物」めいた奴らばかりだ。

 ドクロみたいなツラでグチャグチャな形の巨大な右手を伸ばして来る奴とか、ほぼいつも四つん這いのトカゲみたいな奴、甲冑みたいなんだけどあちこちから蛇みたいなのが飛び出してる奴、どう見てもベトコンみたいな格好なのに冷凍光線を放ってきたりする奴。こいつのキャラ説明には「仙人(Sen-nin)」とか書いてある。…アメリカ人に細かい東洋の機微を説明するのを諦めさせてくれそうなゲームだ。


「じゃあ行くぞ」


 今更細かいルールだのコマンドだの聞いても仕方がない。

 シンは一番まともそうな戦士っぽいのを選んだ。

 ダニーは…上半身が人間の女で、下半身がクモみたいなのを選んだ。

 このゲームでも女を取るってか…女何だか何何だか分からんが。


「Round one fight!」


 始まってすぐに「人間っぽい」という容姿に関する言及を撤回せざるを得なかった。

 戦士は手に剣を持ってるクセに頭がぱっくり割れてそこから出て来る触手みたいなので戦うのだ。気持ち悪いなあもお。何なんだこのセンスは。


 その上このゲームだけは偉く操作感覚が重いナスビみたいな妙なレバーだし、ボタン配置も上段パンチ、下段パンチ、上段キック、下段キック、防御の5つというおよそ日本人のセンスではありえない配置だった。



第五十八節


 小・中・大パンチにキックというのは強さも出る技もハッキリ分かりやすくイメージしやすいんだが、このボタン配置にパンチもキックも全部触手で行うこの訳の分からんキャラである。


 だが、ここまで2種類の格闘ゲームをやってきたことが良かったのか、レバーを前に入れた状態で上段パンチボタンを押すと相手をかち上げる技が出ることに気付いた。


 …ん?これってかち上げると同時にこっちもジャンプしてバンバン技を当てまくればいいんじゃないのか?

 その様にやってみるとバンバン決まる。

 ここから先は“感覚”としか言い様が無いのだが、相手より先に着地するのでまだ空中にいる相手に更に追撃し、着地と同時に裏回りしてガード方向を惑わす…といった動きを「手が勝手に」やっていた。


 背後でリチャードの「ひゅう」という口笛が聞こえる。

 見た目は気持ち悪いが、なるほどこのゲームは面白い。まるでパズルというか、リズムに乗ってボタンを刻んでいくとパンパンコンボが入るゲームだ。

 それ自体が爽快なのである。


 またもダニーは防戦一方だった。

 ダニー操る下半身がクモみたいになってる女キャラは相手を投げたり、どうやらゲージを消費して出す必殺技なんかの演出中なんかにしょっちゅう抜け出しては人間の姿になってすぐにまた戻ることを繰り返していた。

 そしてそのスタイルが…なんとバニーガールなのだ。いや、完全にバニーではないのだが、網タイツやハイレグなどがバニーガールを思わせるデザインである。

 要するにその異形のプレイヤーキャラクターの中でも最も人間に近いのがこいつだったってことなんだろう。


 シンはプレイしていて気が付いたが、このゲームはさっきまでの2つと「論理」というか「感覚」がまるで違う。

 一輪車と竹馬というか…それこそ言葉で上手く説明できないのだが。

 特に2戦目のゲームなんかは割とじっくり戦うタイプで、細かい技の差し合いと読み合いを楽しむタイプ。

 だが、今やってるこのキモいゲームはへんてこな挙動を利用してどんどん技を繋いで行くゲーム性なのだ。その様に動けないと勝てない…というかゲームにならない。

 そしてダニーの動きは、まるで「従来のゲーム」そのままで、このゲームならではの動きに全くなっていない。



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