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リチャード・ケイジの場合 25


第四十九節


「スゲエ!すげえよお前ら!男同士でそんな会話ありえねーぜ!」


 勝手に興奮しているリチャード。

 すると、勝手に画面が切り替わった。


「そっちでもスタートボタン押しな!大会設定が面倒だから乱入してくれ」

「分かった」


 対戦格闘ゲームとは、普通にコンピュータの操るキャラを倒し続けて、ラスボスを倒すことで終わるところに「乱入」して1対1の戦いを挑むことで成立する。

 だが、「大会」の開かれる頻度が高くなると、1戦でお互いが終了する「大会モード」が要請される様になる。当然このゲームもそうしたモードは搭載しているが、その場合立ち上げ直して設定をやり直す必要があるのでダニーは「乱入してくれ」と頼んだのだ。


 そんなこんなで2試合目が始まった。

 目の前にあるのは現在の「対戦格闘ゲーム」の形式を作り上げた「元祖」とも言われるゲームの最新作だ。

 一枚一枚の絵を点描で描いたものを連続して表示していたものから、画面内を3D処理されたCGキャラが暴れまわる様子は技術の進歩を感じるには十分だ。


「確かにお前ら日本人はこのゲームにゃ強いが、オレだってボストン代表を決める予選に出る予定なんだぜ!」


 シンは複雑な気持ちになった。

 ダニーの言っていることは一見すると凄そうに聞こえなくもないが、要は「予選に参加する」としか言っていない。「ボストン代表だ!」とか「全米チャンピオンだ!」というのならばともかく…。

 参加だけなら小学生にだって出来る。


「参考までに聞いていいか?」

「何だよ」


 白人女性の声はやはり甲高くない。低く落ち着いている。だがそれでもトーンは男よりは高い。


「去年の戦績は?」

「…去年は一回戦で不覚を取ったが、今年は違うさ」



第五十節


「それは本選でだよな?」

「いや、地区予選だ」

「そうか…」


 確かに伝説のチャンピオンクラスでも短期決戦の大きな大会では1回戦でトン死することはままある。だがそれは予選を勝ち抜いた猛者どもがあつまる本選レベルの話だ。

 仮に地方予選で負けたとしても、一流プレイヤーともなれば抜けられるまで各地の予選を渡り歩くのは当たり前だ。

 これは日本での話だが、新宿を根城にしているプレイヤーが北海道代表として本選に出場したことがある。要は北海道まで戦いに行き、“現地で”予選を勝ち抜いたってことだ。

 気合の入ったプレイヤーなら当たり前のことである。


 腕前があの有様である上に地元開催大会1回に賭けると言うだけでは到底好成績など望めない。

 「対戦格闘ゲームなんて趣味はやめておけ」とアドバイスしたくなる。


「始めるぞ」

「ああ」


 「乱入!」の文字が英語で踊り、キャラ選択画面へ。

 シンは呆れた。

 こいつ…カード使ってやがる。


 カードとは、戦績などを記録することが出来るアイテムで、総プレイ回数や勝敗数、勝率などが自動集計されるのでプレイのモティベーションを上げることに貢献する。

 そして…ダウンロードデータやゲーム内通貨などを消費することで「カスタマイズ」が可能となるのだ。

 戦力には全く関係ないが、衣装を変えたりアクセサリーを付けたりすることが出来る。

 アバタ―などは突っ立っているだけだが、実際に殴り合うキャラを着せ替え出来るので、勝敗そっちのけでそれにばかり夢中になるプレイヤーも大量に生んだ。 


 ダニーは…やはり女の子キャラだった。

 こいつは一貫して女の子キャラしか使わない。

 「女性」ではなくて「女の子」である。

 そして、ダニーが選んだ「女の子」キャラは日本の女子高生みたいなキュートな制服にアレンジしてあった。



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