リチャード・ケイジの場合 21
第四十一節
「流石口から生まれた見てえな奴らだ。すらすらと良く出やがるぜ」
「どうも」
「だが…だとしても、やられちまった後だ。例え俺を罰することが出来ても取り返せんだろ」
「…もしかしてお前…」
にやりとするダニー。
「ここまで話を聞かれた以上、シン…お前はともかく、そこのツンツン頭のクソ弁護士…お前にゃ明日から女子便所に入ってもらうぜ」
「あ、ウチの事務所のトイレは男女共用なんだ」
「リック!」
口を隠すポーズをするリチャード。こいつには危機感は無いのか。
「…一般人を連れたままこんなところに来たオレのミスだな」
「そういうことだ」
「おいおいシン!どういうことだ?」
「だから初日から付いてくるなって言ったろ。危険だってさ」
「おいおいやめてくれよ!オレは女は大好きだがなりたい訳じゃない!女になっちまったら女と出来ないじゃないか!」
「…メタモルファイトってことでいいんだよな?」
「ああ」
「勝利条件は?」
「変身決着でいいだろ」
「ふむ…」
その場を回る様に後ろ手を組んで歩くシン。
第四十二節
「こうしないか?折角ここはゲームセンターなんだ。ゲーム対決も混ぜよう」
「混ぜる?」
「オタク、運動も勉強も苦手だが、ゲームでだけは慣らしてるって風に見えるぜ。違うか」
「…だったら何だ」
「3種類でいい。ゲーム対決をして、勝ったら相手に一方的に能力を掛ける。1/3ずつ相手を変化させるんだ」
「…それで?」
「ゲーム対決が終わったなら晴れてメタモルファイトの開始だ」
「どちらかがゲームで3連勝してたら?」
「その場合は変身はほぼ完了した状態で開始。一度でも相手の攻撃をまともに食らった時点で変身完了ってことにする…どうだ?」
リックが手を引っ張った。
以下、ひそひそ声である。
「おいシン!」
「それだとあっちに有利なんじゃないのか?」
「かもな。だが都合がいいことにここにあるのは殆ど日本製ゲームだ」
「世界中の大抵のゲームは日本製だよ!」
そんなことはないが…。
「あいつはここのヌシみたいな奴だぞ。大丈夫か?」
「実は今朝対決したことがある。…大丈夫だ」
「本当か?」
「ダニーはああ見えて…いや、元いじめられっこだからこそプライドが高い。自分のフィールドだと思ってる分野で挑まれればまず乗って来るさ」
「いいだろう!」




