リチャード・ケイジの場合 18
第三十五節
「ご名答だ」
「ってことは女にしちまったってことかぁ!?永久に!」
流石に大声を出すリチャード。
「…そこのクソ弁護士が何故メタモル能力のことを知ってんのかは問うまい。が、そういうことだ」
「ふん…なるほどねえ」
「非難するか?学校生活を『特に何も感じなかった』エリートさんはよお!」
複雑な思いで立ち尽くしているシン。
「…別に非難はしねえよ。オレだって今まで何人もの男の人生を狂わせてきたからな」
「そうさ」
「参考までに聞きたい。今まで何人ぐらい女にした」
「8人だ」
よどみなく数字が出てきた…ってことはきちんとターゲットを絞ってカウントしてるってことだろう。
「予定だとあと何人毒牙に掛ける?」
「最低でもあと5人」
「そいつらは今どうしてる?」
「3人は別の州の大学に行った。一人はヨーロッパだ。しかしいつか追いつめてやる」
「…ってことはあと2人は地元にいるってことだな?どこにいる」
「聞いてどうする」
「本人に警告するとでも?そんなアホな話、誰も信じねえよ。純粋に好奇心からだ」
しばし間があった。
「ハーバードにいる」
第三十六節
「…ハーバードの大学生?」
「ああ。一人は飛び級で大学院生やってら」
恐らく友人関係ではない相手のここまでの詳細を知ってるってのはよほどの情熱を持って調べたのだろう。この執念はただ事ではない。
「何故すぐに手に掛けない?」
「ふっ…決まってんだろうが。いざ大学院を卒業する段になって天国から地獄に叩き落としてやるのさ!」
「バカな!」
リックが口を挟んだ。
「…ダニー、日本人の俺がこんなことを言うのは釈迦に説法だと思うが」
「何だって?」
「ああその…ブッダにブディズムを教えるみたいなもの…日本の言い回しだ。とにかく分かってると思うがハーバード一帯は観光客はこう言われる「くれぐれも交通事故を起こすな」って」
「ふん」
「将来のビル・ゲイツを轢き殺す危険性がある。或いはアインシュタインをな」
「だから何だ」
「お前がハイスクール時代に何があったのかは知らん。だが、水に流すことは出来ないか」
「出来んね」
即答だった。
「スティーブ・ジョブスにしろアインシュタインだって人格的にはとても褒められたもんじゃない。だが偉人だ。人類にとっての」
「だからキモい同級生は喜んで犠牲になれってのか?」
「そうは言ってないが」
「そう言ってるだろうが!」




