リチャード・ケイジの場合 13
第二十五節
「関係ない関係ない!何のために俺が弁護士になって法律事務所やってると思ってんだ。お金を稼ぐためだぞ?そしてその金はオレの趣味に使うためさ!」
ま、恐らく金に関してはきっちりしてるんだろう。法律の専門家だから「節税」あたりにも気を配ってくれているに違いない。
「ま、ともかく探してみる。上手く行けば1日1戦くらいは見せられるかもな」
「まーじか!?」
リチャードにはまだ「条件決着」周りの話はしていない。要は談合でお互いを変身させあったり自由に戻ったりが出来る。恐らくは本来の使い方からは離れているんだろうが、可能は可能だからな。
「あてはあるのか?」
「…正直、余り無いな」
雲を掴む様な話である。
「お互いの合言葉とか無いのか?ウチの名前で地域の新聞広告くらいなら出してやるぞ」
シンは考え込んだ。
なるほど新聞広告か…。
「といってもなあ。お互いを女にさせあいませんか?って掲載すんのか」
「問題ないと思うぞ。ゾディアック事件みたいな劇場型犯罪で新聞広告が使われる例は幾らでもある」
確かに真っ正直にメタモルファイトのことを書いたところでメタモルファイター以外がまともに取り合うとも思えない。
もしかしたら当局にマークされていたり…ってそれは無いわな。
「いや、やめとこう」
「どうして?」
第二十六節
「メタモルファイター同士で決まってる共通の符丁みたいなものがあったりするんならともかく、別にそういう訳でもないしな」
「何だよ。お前ら横のつながりが無いんだな」
「そうだな」
ジョー(ジェニー)・キングに挑んで敗れた者は大勢いるらしいが、今もベガスに残ってるのは女にされたことに観念してバニーガールとして働いている一般人に過ぎない。
ジェニーなら今も現役のファイターの一人くらい知っているかも知れないが、この間別れたばかりなのに早くも連絡を取って頼るのも何だか情けない気がする。
「ま、とにかく時間をくれよ。あてはないけど探してみる」
「街頭インタビューを装って訊くのか?『はぁ~い!そこのイカしたお兄さん。あんたメタモルファイターなんですかぁ?』って」
苦笑するシン。
「悪くないアイデアだが…俺らはどうやら同類は惹かれあうみたいでね。人ごみの中でも察知できるんじゃないかと」
「そうなのか?ゲイやオタクでも似たような話は聞いたが」
「ゲイやオタクねえ…」
どっちもマイノリティ?…ってことなんだろうか。
「この間までいたのがテキサスだからさ。繁華街なんて無かった。ボストンとニューヨークを流せば一人くらいいるかもしれん」
言うまでも無くニューヨークと言えば世界一の繁華街だ。渋谷と新宿と池袋を足して3を掛けたようなところである。
「お前ってベガスから来たんだよな?」
「ああ」
「ベガスにゃいたのか?メタモルファイターが」
「ジョーに会ったぞ」
ひゅー、と口笛を吹くリチャード。




