リチャード・ケイジの場合 12
第二十三節
「やかましいよ」
周りの人への迷惑だ…と言いかけたが地下のライブハウスで我々以外は無人なので黙った。
「おいシン!お前あっちの方はどうなんだああん!?」
「…まあ、人並みに」
「だったら入れ食いだなあ?そうだろ?」
「よせよ。こちとら無差別レイプ犯じゃないんだ」
「ちーがう違うって!この能力は相手が男だとバニーガールにしちまうが、相手が女ならバニーに着替えさせた上で思い通りに出来るんだろ?」
厳密にはちょっと違う。その場合でも「相手を女に」はしているのだ。ただ、元々女だから目立たないだけなのだ。
とはいえ、一般人相手に発動するには「自衛能力として」発動する必要がある。
女性相手にそこまで生命の危機がある場合などありえるんだろうか?少なくともシンはアメリカにおいてすら経験が無い。
「まあ…そうかな」
「だったらもう決まってるじゃないかぁ!あの衣装はいかんね!セクシー度が3倍になる!どんなブスでもあっという間にセクシー美女に大へーんしんだぁ!」
何なんだこいつは。弁護士とか言ってるがスタンダップコメディアンだったのか。…まあ、似たようなもんか。
「悪いが、行きずりの美女に無理やりバニー着せてイタすとなると弁護士に相談しないとな」
「問題ない問題ない!そんなもん大人の男と女だろうが。子供じゃないんだし、お互いの自由意思ってことで罪状認否で却下させてやるさ!」
本当に大丈夫なんだろうか。
第二十四節
「まあ、概ね分かった。オレにメタモルファイターの知人でもいればいいんだが、アメリカにはいないんだ」
「日本にゃいるのか?」
「まあね」
「Oh!Shit!何でこう面白そうなもんはみんな日本に持ってかれるんだ?散々クルマやゲーム買ってやったんだから少しは遠慮してくれよ!」
お前が買った訳じゃねえだろ…と思ったが折角のパトロンの機嫌を損ねてもナンだ。
大体このリチャードって奴は弁護士と言う割には短慮で迂闊なところはあるが、決して悪人ではなさそうだ。
「…ちょっと時間くれるか?」
「どれくらいだ?」
「そんなこと分からんよ」
「何をする時間だ?」
シンは少し間を取った。
「リック…でいいよな?」
「勿論だ」
「リック…お前が望んでるのはメタモルファイトだよな?」
「ああ」
「ってことは後腐れの無いファイトに応じてくれるファイターを探す必要がある」
「なるほどそうなるな」
「もしかしたらもう一人囲う芸術家が増えるかもしれないぞ」
「いいね!願っても無い」
「大丈夫か?ボストンじゃ家賃だって馬鹿にならないだろ」
ボストンは全米でも屈指の「家賃が高い」エリアである。
ついでに言えば日本の北海道よりも遥かに北極に近い…要は北なのでかなり寒い地域でもある。死にたくないなら光熱費もそれなりに掛ける必要がある。




