リチャード・ケイジの場合 11
第二十一節
「俺かい?…残念なことにゲイじゃないんだこれが…だったら面白いんだけどな」
「は…あはは…」
反応に困るわい。
「言っとくが俺は偏見は無いからな。そもそもニューヨーク近辺に住んでてゲイとの付き合いを避けて仕事なんぞ出来るかよ。男の5人に1人はゲイだぞ」
「おい!」
「…すまん、言い過ぎた。まあ気にしないでくれ。ケイジ哲学だ」
こほん、と軽く咳払いをするリチャード。
「とにかく!はっきり言って俺は超エロエロ男だ!」
「…はあ」
「確かに旧約聖書には『男は女の様に、女は男の様に装ってはならない』と書いてある。だが、このメタモル能力は問題無い。何しろ女になってから女の様に装うんだからな!禁忌は犯してないぞ!」
何という屁理屈だろう。
ただ、聖書には「男が女に変身してはならない」とは書いてないだろう事だけは間違いない。
「この世で一番美しいものは何か!?決まってる!美女同士のからみだよ!」
流石のシンもドン引きした。
「メタモルファイト!それは世にも珍しい男同士による女同士のキャットファイト!めくるめく悦楽と官能!法悦の極み!」
この辺になると英語でも単語そのものが聞き慣れずに難しいので何を言ってんだか半分くらいしか分からん。言いたいことは分かるんだが。
「…ということで、間近でメタモル・ファイトを見せてくれ。それが報酬だ」
あー…という表情になるシン。
「…そういうことか」
「そう。下心あるだろ?」
「確かにな」
シンは少し考えた。
リチャードのエロエロ好奇心がここまでしてくれる動機ってことか。なるほど分かりやすい。
第二十二節
「こっちからも質問いいかな」
「何なりと。ブラのサイズについてとかはやめろよ。俺じゃ相談に乗れないからな!」
といってウィンクする。
どーもメタモルファイターに偏見がある様だ。まあ、下手すると日常的に女装してるみたいに思われかねんのは分かるんだが。
恐らく他にいろんなタイプのメタモルファイターがいるんだろうが、こちとら女物一般にすら詳しくない。自分で着てる訳じゃないこともあってバニー・ガールの衣装にすら詳しくない。
「今までにもこんな風にメタモルファイターを囲んだことはあったのか?」
「いやない。ジョーの奴が送り込んでやるとは言ってたがあんたが最初さ」
まあ、あの能力では相手を永続的に女にしちまう上にメタモル能力すら奪っちまうんで仕方がない。
「そうだ!肝腎なことを聞いてなかった!」
えらく大声を上げるリチャード。
「あんたの能力は?衣装の種類は」
「…オタクの相棒と同じさ」
歓喜の雄たけびを上げるリチャード。




