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リチャード・ケイジの場合 09


第十七節


「何だって?」

「元々弁護士を目指してはいたんだけど、これで完全に腹が決まったんだ。法律を扱える仕事に就くぞ!ってね」

「…で、彼女たちを風俗にあっせん…か」

「…まあな」


 たちが悪い…気がする。


「ジョーの紹介だから話すが、その線でベガスのマフィアとコネが出来てね」

「…それでか」

「ちょいとおっかなかったんだけど、何度か招待されたよ」

「…自分らが送り込んだバニー・ガールをはべらせてもらって…か?」

「良く分かるな。その通りさ」


 …なんてこった。言ってみれば社会的身分を持たない生身の女を…生身の男というかけがえのない原資を使って…量産する「能力」だから、その後に禍根を残すのが必然なんだが、こいつらはもう「産業」として成立させてやがったのか。


「その時にギャンブルの魅力に取りつかれたジョーは居残ったんだ。おいらは地元であるボストンに帰って念願の弁護士事務所を立ち上げた」

「バニーガール代を足掛かりに…か」

「そういうこと。だからメタモル・ファイターには足を向けて眠れないのさ」


 珍しくその辺りは浪花節なんだな。義理と人情の世界だ。


「どうしてついて行かなかった?」

「ベガスにか?」

「ああ」

「あそこは観光地だ。遊びに行くのはいいが住む所じゃない。そもそも地元で弁護士事務所をやるのが夢だったからな。それに…」

「それに?」

「バニーガール供給業なんていつまでも継続的に続けられる訳が無い。もっと安定した仕事を探してたんだ」


 刹那的で享楽的かと思いきや堅実だ。二面性があるなこのリチャードとやらは。


「それで?今いくら持ってる?」

「…依頼はしないぞ」

「ちーがう違う!そうじゃなくてオタクの身分をもっとちゃんとしてやるって言ってんの」

「身分?」

「どうせ観光ビザだろ」

「…まあ」

「別に雇う気はないがとりあえずウチの経営してる不動産をあてがってやるからそこを定宿ってことにするといい」

「ちょっと待てよ!」



第十八節


「どうしてそういうことになる」

「だから言ったろ。オレはあんたがたには恩義があるんだ。世話をさせてくれ」

「大きなお世話だ。自分でやれる」

「まあそう言うな。別にあんたのためじゃない。これはオレ自身のためでもあるんだ」

「何だって?」

「どうせカードも作ってないんだろ。この国じゃクレジット・カードは命綱だ。持ってて損は無い。幾らメタモルファイターだからって、札束持ち歩くのはクレバーじゃない」


 …確かに。


「よし完璧だ。諸々(もろもろ)の手続きに半日は掛かる。すぐにスマートフォンも持たせてやるぞ」

「しかし、定住する気はない」

「する必要なんかない」

「は?」

「部屋はやるし、家賃ももらうが形式上だ。こっちも節税対策だってこと。どうせすぐ放浪の旅に出ちまうんだろ?期待してねえよ」

「しかし…」

「あとは訴訟リスクだ。分かってると思うが何があっても判断に困ったら必ず連絡するんだ。弁護士立ち合いの元でやった方がいいことも多いからな」

「…」


 確かに弁護士…それも超やり手の…が味方についてるというのは何よりの強みになる。


「ウチは民事専門なんでそういう事件に巻き込まれたら直接助けられんかもしれんが…まあ何とかしてやる。刑事事件専門の凄腕弁護士を何人も知ってる。何やってても助けてやる。その代り…証拠は残すなよ?」

「あ…あはは…気を付けるよ」


 「やるな」ではなく「証拠を残すな」というのがポイントだ。要は「実際にやってたとしても助けてやる」と言っているのだ。


「…どうしてそこまでしてくれるんだ?」

「というと?」

「何が下心があるんじゃないのか?」

「あるに決まってるだろうが」



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