Dear "YOU"
高い、高い空の上。
キュルルル……と、一羽の小鳥が右から左へと飛んで行った。
見つめるのは、想いを馳せるのは、その、より向こう側。
ここから手を伸ばしても届かない先にいる、私の恩人。
「ねぇ、―――? 今の私はどんな顔をしてる?」
何の感情も込められていないその声は、ロボットのようで、機械的。
「絶対的な壁。絶望的なまでの差。変えられない現状。
けれど、再会を約束されたこの距離。
私とあなたとの関係は一体、何?」
さらさらと梢を揺らす風が私の前髪を巻き上げて、去っていく。
眩しい太陽に目を細め、ゆっくりと流れゆく雲にフォーカスを合わせる。
「あなたの声が聴きたい。あなたの顔が見たい。
……なのに、いつも一方的。
あなたは私のことをいつも視ていて、私はあなたの存在も視れない」
一雫の水が顔を伝って耳元に咲く花に注いだ。
ギュッと目を閉じると、もう二雫、同じ経路をたどって流れた。
「逢いたい。話したい。あなたと別れてから今までにあったこと。
悲しいこと。うれしいこと。おもしろいこと。いろいろ、たくさんあった!」
それは、叫び。
声のボリュームをぎりぎりまで下げて、聴こえるか、聴こえないかぐらいまでに押し殺された、
心の叫び。
「胸が苦しいよ、―――! 私はあなたに逢いたくて、逢いたくてたまらないのに――っ!」
バッと開けた瞳には、青く青く澄んだ空が映されるのみ。
眦からは、溢れた涙が次々と流れていく。
「……でも」
空に向かって手を伸ばし、しばらくしてから、ギュッと手を握って、その手を胸に置く。
「コレが、そうなんだね。―――が教えてくれた、気付かせてくれた、感情」
私は一度目を閉じ、最後の雫を流し、空に向かってほほ笑んだ。
「ありがとう。私に愛することを教えてくれて。ありがとう。……もう少しだけ。もう少しだけ、待っててね!」
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