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時刻は午後5時を40分ほど進んでいた。
この会社は比較的ホワイトで、いわゆる9時5時が成立する。
しかし、僕は昼間の居眠りのせいで終わっていなかった。
真横の椅子では先輩が僕をじーっと見つめている。
「先輩、あの、お昼はすみませんでした。仕事も遅くなってしまって。」
美野先輩は返事をすることなく、僕を見つめ続けた。
いわゆる圧迫だ。
絶対6時までには終わらせよう。見つめられすぎると怖い。圧迫感が半端ない。
必死にパソコンに文書を打ち込んで行く。
時刻は午後6時3分。
無事にパソコンへの入力作業を終えることができた。
ちらっと横を見ると、先輩はまだ僕の方を向いていた。終わったのに、怖い。
「先輩、終わりました。お待たせしてしまい申し訳ありません…。」
また、返事はない。
とりあえず、パソコンの電源を切って、タイムカードを押すために席を立とうとしたその時、
「笹川、お疲れさま」先輩がやっと口を開いた。
先輩と僕の間には結構なタイムラグが発生していたのかもしれない。
寝起きのような掠れた声だった。
「はい、ありがとうございます。すみません、お待たせしてしまい。これからは絶対に居眠りしないように気をつけます。」
今日の失態と、今まで待たせてしまったことを詫びると、美野先輩は本当に寝起きかと思えるように伸びをしたあと、うん、と一言言っただけだった。