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「おい、笹川!!!」頭上で怒声が響いた。
オリエンテーションから数日たったある日、僕はなれない会社勤めの疲れからか仕事中に居眠りをしてしまっていた。
美野先輩は自分に厳しく、他人にも厳しいらしい。
だから、僕が居眠りをしているのが許せなかったんだろう。同じ部署のしかも後輩がいきなり居眠りなんて多分誰がどう見ても許せないだろうけど。
先輩の怒声で目覚めた僕は反射的に立ってしまい、先輩の胸に頭突きをかましてしまった。屈んで僕の顔を覗こうとしていたらしい。
よろけながら胸元を抑える先輩を前に、僕は慌てふためきながらごめんなさいを連呼した。
「痛ぇ…お前、石頭すぎるだろ…今夜予定ないよな。帰りにコテンパンに叱ってやる。その前に仕事しろよ?いいな!」
「わああああ、ごめんなさい、先輩。そんなに怒らないでくださいね、ね?」
先輩の目が冷たく鋭くなるのをみて、背筋に嫌な汗が伝っていくのを感じた。
とりあえず、これからは絶対に居眠りはしないようにしよう。それから、このあとは死ぬ気で仕事しよう。
そして、先輩を怒らせてはいけないと心に誓った。