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47 愛される

「アヤ・・・」

先生の声が直接耳から脳に伝わってるみたいで、ゾクゾクした。

なんて色っぽい声出すんですか、先生。


「・・・しあわせになれって、言ってもらっちゃいました」

「ああ。俺が幸せにする」

「もう、しあわせですよ」

「もっとだ」


先生はいつものように私を抱き上げ、ずんずん進んで先生の部屋に移動した。

カチャリと鍵をかけ、ベッドにそおっと降ろされる。

いつもと同じ、優しさに溢れた動き。


大きな体の先生が、私に対しては慎重なくらい優しく接してくる。

やさしくやさしく、壊れ物を扱うように。大事に、丁寧に。

かと思うと、ぐらぐら揺れるくらい頭を撫でてきたり、息が苦しいくらいぎゅっと抱きしめてきたり。めまいがするような激しさをぶつけられることもある。

もちろん、叩いたりとかの暴力は一度もない。

たぶん、私が小さすぎて先生が大きいから、普段の優しい動きは意識して慎重になってくれている時で、たまにみる力強い動作が本来の先生の動きなんじゃないかなって思う。



いつかの夜に先生が言ってた。

「アヤのこと、大事にしたい。優しくしたいっていつも思ってる。

甘やかしたい、俺なしでは生きていられなくしたい。いつも笑ってて欲しい」

スイッチに入った先生はドンドン甘い言葉を吐いてくる。

「でも・・・」と先生は横を向いて続けた。

「それと同じくらい、ドス黒い感情もある。アヤが好き過ぎて、ちょっと俺はおかしくなってるかもしれない。

アヤのこと、全部自分の色に染めたい。俺だけのものにしたい。他の奴らには誰にも見せたくない。誰にも笑って欲しくない。独り占めしたい。

一日中でも抱いてたい。抱き潰してやりたい。もっと。

・・アヤを抱いてる時は特に気持ちが昂ぶるから、衝動的な行動に出て怖がらせないように、いつも必死で抑えてる」


そんなことを真顔で真正面から言われて、返す言葉が見つからなかった。

先生、ほんと、ストレート過ぎ。

いつも先生には言葉でも行動でも、なんの迷いもなく真っ直ぐに好きだって伝えてきてくれる。

私が先生に好きって言ったのはたぶん、最初の一回だけのような・・


いつもは恥ずかしくって口を閉ざしちゃう私だけど、今日は私も先生に聞いて欲しいことがある。聞いてもらおうって決心してきた。


マユさんは私に、もっと積極的になっていいんだよって言ってくれた。

恋愛にも、友情にも、親子関係にも。

自分から行動することで、もっと楽しくなれるって。

その人との距離が近くなれるよっておしえてくれた。


慎兄ちゃん、先生は変わったって言ってた。

先生にとって良い変化をもたらしたのが私なら、すごくうれしい。



だから私も、伝えたい。先生に。

ぎゅっと拳を握って、頭の中で何度も練習した言葉を口にする。


「・・・せ、先生、あの、・・・いつも、私のこと、

いっぱい愛してくれて、ありがとうございます」

ベッドの上で向かい合って、私は先生の手を握って話した。

目を見るのは恥ずかしいので、先生の大きな手を見つめながら。


「私は、・・・私も、先生のこと、もっと、愛・・したいです」

恥ずかしくて、緊張して、

頭の中は真っ白だった。

用意していたセリフも浮かんでこなくて、口は勝手にうごいてる。


「先生はいつも私にいっぱい、してくれるから。私も先生のために何かしたい。

で、でも、先生は何をしたら喜んでくれるのか、とか、よくわからないから、

・・・先生、私に教えてください」

「アヤ。そんな可愛いこと言われると、抑えが効かなくなるぞ」

先生は眉間にシワを寄せて唸るように低い声で言う。

いつもはここで目を伏せちゃうけど、ぐっと決心して、先生の目を見つめた。


「だ、大丈夫です。わ、私、先生になら何をされてもいい、から。

抑えるとか、我慢しないで、ください。

何をされても、私は、先生のこと、怖いだなんて思いません。だから」


「アヤ。本気でお前は、どこまで俺を夢中にさせるんだ。

しかも、この状況でそんなこと言って、この後どうなるか。わかってるのか?

俺の暴走を止められるのはアヤだけなのに」


がばっと勢いよくベッドに押し倒される。

「ああ、クソっ! なんでお前はこんなに可愛いんだ!」

何かよくわからないけど、怒っているような焦っているような先生。

「愛してる、アヤ。・・今夜は、我慢しない。思いっきりアヤを食う!」

先生は語尾を荒げて宣言し、ほんとに食べられちゃうんじゃないかってくらいのキスをされた。

先生の舌は別の生き物みたいに口の中で動き回る。

音が、すごくやらしくて。やめてって思うのに、気持ちよくて。

堪らずに先生にしがみつく。

息継ぎもできなくてキスだけでゼイゼイになってしまった私を見て先生は笑う。

くくって、楽しそうに。

「アヤ、かわいい」

普段、仏頂面だって言われてる先生の顔だけど、私といる時はけっこう色々な表情を見せてくれてる気がする。

きっと、私にだけ。・・・うれしいな。



・・・とか、いろいろ考えられてたのは最初の数分だけ。

すぐに先生の熱に翻弄されて、思考はトロトロになってしまった。




やっぱり先生は有言実行な人で。

いつもより濃厚に愛されて、愛されて、愛されて・・・。


もうなんども意識が飛んじゃって、朦朧としたままふと顔をあげると、カーテンの向こうが明るくなっているのに気づいて驚いた。

たしかに、我慢しなくていいとか言ったけど!

「せんせぇ、もお、・・」ダメです。しにそう・・。

「アヤ、まだだ。もっと、くれ・・」



その時、ドアがバンバンと叩かれた。

ドアの外で「こらー! いい加減にしろー、テツ! 綾乃ちゃんが壊れるでしょ!」

ってマユさんが大声で騒いで、ようやく先生の動きが止まった。

ふわーっと意識が遠のいていく・・。

「ッチ。・・アヤ、続きは今夜だ。おやすみ」

先生がなにか言ってるけどよく聞こえない・・ねむい・・。


優しく頭を撫でられて、・・・私は、たぶん緩んだ顔で笑ってたと思う。



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