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44 制服

久しぶりに着た制服は足元がスースーしてちょっと落ち着かない。

部屋を出ると、いきなり先生と出くわす。

というか、先生、いつからそこにいたの。

先生は私の姿を見るなりくわっと目を見開いた。

かと思うとひょいと私を抱き上げ、部屋に戻った。

「ちょ、ちょっと、先生・・」

そのまま、ぼふんと降ろされたのは私のベッド。抗議する口をキスで塞がれてしまう。

「んっ・・、や、せんせ」

「その格好で先生なんて言われると、ヤバイな」

何がヤバイんですか!?

慌てて起き上がろうとするも、巨体に覆いかぶされていて身動きが取れない。

もがもがしてる間にも、甘いキスが次々と落とされる。

まるで昨晩の続きのように。


こ、これはマズい。先生、今、朝・・・!


「アヤ。こんな可愛いカッコで学校行って、大丈夫か。誰か不埒な奴に襲われたり・・」

「お前より不埒なヤツはいないっ!」

先生の頭がスパンといい音ではたかれる。

痛そうな音の割にダメージを受けていないのか、先生はジロリと目だけで後ろを見た。

切れ長の目で睨まれてぶるぶる震える上がりながら、マユさんがビシッと先生を指差して見下ろした。


「朝から、いたいけな女子高校生を襲ってんじゃないわよ、このどスケベ!」

ぐいっと先生をどかすと、私を引っ張って起こしてくれる。

「もうだいじょうぶよー、綾乃ちゃん。野獣はおねえさまが退治してあげたからね。さあ、ご飯にしましょ。テツも、もっかい顔洗ってらっしゃいよ!」

「・・・」

プンプン頬を膨らませてマユさんが部屋を出て行く。


「先生、あの・・・」

さっきマユさんに叩かれたところをそっと撫でると、その手を掴まれた。

「ああ、こんなの痛くも痒くもないから気にするな。それより邪魔が入ったが助かった。あのままだと普通にアヤを食い尽くしそうだった。すごい威力だな、制服」

「な・・・」

絶句する私を見て、先生はニヤリと笑って、私の手にキスを落とす。

「めちゃくちゃ可愛い。今も、抑えるのが大変だ。アヤ。夜には存分に食わせてくれよ」

優しい声ですごいことを言う先生は、ホント野獣さんなのかもしれない。




*****


嶋田さんの案は、先生が校門のところに迎えに来るのを皆に見せつけるというものらしい。もっとすごいことを言い出すかと思ったからホっとした。


三時頃。久々に来た学校は授業中ということもあってシーンとしている。

校長室に着くまで誰にも会わなかった。

手続きはすぐに終わり、ちょうど下校時刻になった。嶋田さんが校長室に迎えに来てくれて、一緒に校門に向かった。たくさんの人の好奇の目が突き刺さる。


「ほら、あの子」「ああ、事故で・・」「見たことないな。可愛いじゃん」

「親、亡くしたんだろ?」「カワイソー」「あんな顔してたっけ?」

聞きたくないのに、ヒソヒソとささやきあう声が耳に入ってくる。



「ねえ、あれ、誰?」「白衣だよ。医者?」「えー? すごい、かっこいい!」

「芸能人?」

校門近くに来ると、ちょっとした人だかりができていた。

見たことがある白い車。あれは父の。

そこに寄りかかるように立っているのは・・


「綾乃、ちょっとしゃがんで?」

突然嶋田さんに言われて、首を傾げながらもその場でしゃがんだ。

「ん。そのまま、そのまま。立っちゃダメよ。ずっとそのままね」

小声で出される指示。

そして。

「・・・アヤっ! 大丈夫か?」

先生は白衣をマントみたいにはためかせて私のところまで走って来た。

え? 先生、髪が長い? 黒ぶち眼鏡もかけていて、いつもと違った印象。


野次馬状態で取り囲んでいる生徒たちがざわめく。

「坂口先生、綾乃、長く歩くとまだちょっと痛いみたい」と嶋田さん。

「そうか。無理するな。帰ってゆっくり休もう」

先生の声はいつもよりも、大きめ。周りにも聞かせるようにしてるみたい。


「連絡をいれてくれて助かった。明日からも、アヤを助けてやってくれ」

「はいはい。先生の、大事な綾乃、だもんね」

先生の手が私の膝裏と背中に回され、ひょいっとお姫様抱っこされる。

きゃあ、と女子から黄色い声があがる。


「せ、せんせいっ」

こ、こんなことまでしなくても・・・!

「アヤ、帰ろう」

先生はちゅっと私の額にキスをして、じゃあ、と嶋田さんに声をかけた。

嶋田さんはにこやかに手を振っている。


助手席のシートにそっと降ろされ、シートベルトまでしてもらって、私の心臓はバクバクだった。

窓から、まだ大勢の生徒がこちらを見てきゃあきゃあ言ってるのが見える。

先生はポンポンと私の頭を撫でると、車を発進させた。


ちらりと運転中の先生を見る。

髪が長くて眼鏡をするだけでこんなに変わるんだなあ。

「そのカツラ・・」

「マユが持ってきた。ゲラゲラ笑いながら色々された」

マユさんすごい。白衣の中に着ているスーツもいつもと違っていて、全体的に雰囲気がガラリと変わっているから感心してしまう。

あ、傷も髪で少し隠れているし。

いつもより近づきやすい感じ、に見えるのかな。他の人には。


珍しくてついジッと眺めてしまった。

信号で止まると先生は私の方を見た。

「長い方が好きなら伸ばすか」「いえ、いつもの髪型もすごく好きです!」

つい、即答してしまう。だっていつものツンツンの短髪、好きなんだもの。

長いのもかっこいいって思うけど。


「参ったな・・」

先生が、はあーっと大きくため息をついてハンドルに顔を伏せる。

「どうしました?」

「なんでそんな可愛いこと言うんだ。今すぐそこに寄って行きたいけど、アヤは制服だし、マズいよな。家まで我慢するか・・」


先生の視線の先には、お城のようなラブホテル。ちょ、ちょっと、先生!

ダメに決まってます!





*****


次の日、教室に入るとわあっとみんなに囲まれた。

今までクラスメイトとあんなにしゃべったことなかったから驚いた。

事故のこと大変だったね、もう大丈夫?ってあったかい言葉をいっぱい掛けてくれた。

陰でコソコソ言ってる人たちもいたけど、その人達に対して怒ってくれる人もいた。


「ねえ、昨日車でお迎えに来てた人って、石崎さんの彼氏?」

一人が先生のことを口にすると、ますます人が集まって来た。

「あの人誰? 彼氏、医者なの?」「うわあ、大人のカレシ、すごい!」

「怖そうな人かと思ったけど、ラブラブだったもんね」

「お姫さま抱っことか、されてみたいー!」

私を置いて、女子が盛り上がっている。


ちらりと嶋田さんを見れば、グッと親指を突き立てた。

「グッジョブ、でしょ?」と言わんばかりに、ばちんとウインク。


ほんと、嶋田さんはすごい。

あとでもう一度、ありがとうってお礼を言おう、と思った。

あと、五話で完結です。

最後まで、テツの暴走にお付き合いください( ´▽`)/^

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