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36 甘い甘い時間

「お前の目が見えるようになったら、お前を抱きたい」と言っていた先生。


先生は、有言実行な人だった。



なにぶん私は・・・初めてで。もう何て言うか、わけがわからないまま大きな波に飲まれたような、そんな出来事だった。



先生は私を抱きしめたまま、覆いかぶさるように広いベッドに倒れこんだ。

私なんてすっぽり包んでしまうくらい先生の身体は大きくて、驚いた。


普通、こういう・・行為は、夜、暗い時にするものだと思っていたから、明るい中で服に手をかけられて、焦ってしまう。

キスの合間に、先生に訴えても「気にするな」の一言。


ガッチガチに固まってしまった私を見て先生は、怖いか?と聞いてきた。

いつもの声とはちょっと違う、硬い声。先生も緊張しているのかなと思うと、少し体の力が抜けた。


キスはもう何度もしてもらってる。

・・・でも、ベッドの上で、こんな状況でのキスは、今までのとは別物だった。


先生の指が、唇が・・舌が、私の身体を隅から隅までなぞっていく。

先生の大きくでゴツゴツした指とは思えない、丁寧で優しい動き。

私の身体はどんどん熱くなっていく。

重ねられた先生の身体もとても熱く感じた。


見られることも触られることも恥ずかしくてたまらなかった。

ぎゅっと閉じている目をそっと開けるたびに、先生と目が合う。

途中から恥ずかしいって感じるのも忘れるくらい、いっぱいいっぱいだったけど。



先生は、最初から最後までずっと言葉を掛けてくれた。

大丈夫か、痛くないかって。眉間にしわ寄せて、先生の方が痛いみたいだった。


「好きだ」って、何度言ってもらったかわからないくらい。

先生の息づかいも、熱さも、全部、嬉しかった。


朦朧とする意識の中、先生が私の髪を撫でてふっと柔らかく笑ったのを見た。

切れ長な目を少し細めて、口の端をゆるく上げて。


その顔が見れたことが嬉しくて、涙が出た。







*****


一晩眠って朝がきて、目を覚ます。カーテンがしてあっても陽の光はたっぷり入って、部屋を明るく照らし出している。


うう、まぶしい。やだなあ。

起きたくない。

こんなに気持ちがいいのに。もっとこうしていたい・・。

あー、ずうっとこうしていたいなあ。


ぼんやりとした頭であったかいものに擦り寄る。

「かわいいな、アヤ」

上から降ってきた低音。

「・・・!」

一瞬で目が覚めた。

・・現状も理解した。

昨日の出来事が夢じゃないっていうことも、すぐにわかった。

私の身体にがっちり回された先生の太い腕。

目の前にある先生のキレイな整った顔。

先生は裸で、私もキャミソールを一枚着けているだけの心許ない格好。

なんだか身体が全体的に重い・・だるい。


先生は、少し体を起こして覗き込むように私の方を眺めていた。

片腕だけで私を抱きしめて、もう片方で私の髪や頬を撫でている。


「身体は大丈夫か? 痛みは?」

「そんなに痛くはないです、けど・・・、全身が、なんていうか、ぎこちないと言うか、変な感じです」

「すぐに慣れる」

先生の手が、また私の背中を撫で始めた。

ゾクリと身体が震え、小さく声が漏れてしまった。

ニヤリと笑う先生は、なんだか嬉しそうで、・・・恥ずかしい。


思わず逃げ腰になると、ぐいっと抱き寄せられる。


「俺を避けたり逃げるのも恥ずかしいからか。

俺に触られることが嫌だからというわけじゃないんだな?」

そんな質問が降ってきた。

「も、もちろんです。嫌だなんて、思ったことありません」

「そうか。なら、いい」


あ、・・えっと、恥ずかしいのは、恥ずかしいんですけど。

付け加えた言葉は先生には聞こえなかったみたい。


「腹が減ったな。夕べは食い損ねた」

確かに。お昼すぎに帰ってきて、そのままベッドへ・・・

え? それで今、朝ってどういうこと?


「・・・いや、アヤを食ったか」

ってニヤリと笑う先生は色気たっぷりで、私は恥ずかしくてシーツに潜った。

そしたら「可愛い」って声が降ってきて、先生までシーツの中に侵入してきた。

「え、ちょ、せんせっ・・」



朝ごはんはお昼ごはんになりました。





*****


そして、先生の甘さが増した。

なんて言うか、もう、すごい。

一緒にいる時間が、あまーい。


例えば私が一人でテレビを観ようとソファに座ると、先生はすかさず隣にやって来る。私を後ろから抱き込むように座ったり、膝の上に乗せたり。

二人の時はまだいいとして、慎兄ちゃんがいてもマユさんがいても全く気にしていないみたいで、困ってしまう。



「綾乃ちゃん、だいじょうぶ?

こんなでっかいのに取り憑かれて、神経すり減らない?」

「ちょっと、テツ、いい加減どこでもかんでもピッタリくっついているの、ヤメテあげなよ。迷惑でしょ」

マユさんと慎兄ちゃんが注意しても、先生は素知らぬ顔だ。それどころか私に、

「早く俺に触られることに慣れろ」とか言ってくる。

早く慣れるようにと、いっそうスキンシップが増える。

うう・・。

嫌じゃあないけど、恥ずかしいんですってば!


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