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第7話 人攫い

透矢はブルセラショップで予想以上の収穫を得ることが出来たので、当初の予定から装備を変更することにした。


今の透矢の装備は以下の通りである。


赤の弓(2000G)、矢×100本(50G)、旅人の服(200G)、皮の胸当て(400G)、皮のロングコート(1000G)、皮のブーツ(250G)、皮のグローブ(150G)


防具の色はプレイヤーが選べる仕様らしく、透矢は全て黒にした。


黒とは言っても完全な真っ黒という訳ではなく、鋲や銀糸の刺繍がアクセントになっていて、中々いい感じだ。


そして、今回の買い物の一番の目玉は『赤の弓』である。


これはファイヤーアローという、火を纏った矢を撃てるようになるスキルが付与された武器だ。


しかも、この弓の熟練度を100%にすることで、他の弓を装備していてもファイヤーアローが撃てるようになるらしい。


やはりキャラネームを『凍矢』にしなくて本当に良かったと透矢は安堵した。


実は他にもいくつか種類があったのだが、何となくこれから臨むイベントにはこの弓が一番適しているような気がして、気付けば手に取っていた。


デザインは赤地に黒のラインが数本引かれており、透矢の衣装にもマッチしている。


残った金は宿代と食事代を残して全てポーションに換えた。


現時点で出来る準備はこれで全てだ。


これでもダメだった時は、もう一度作戦を練り直すしかないだろう。




万全の体勢を整えて噂の宿屋に入ると、店の中はガラガラだった。


1階は食堂らしいのだが、そこに客の姿はなく、テーブルには薄っすらと埃が積もっていた。


「こりゃまた随分と不景気そうだな?」


「そうですね。宿賃が激安なのも、お店の人の苦肉の策といったところでしょうか?」


「・・・いやはや返す言葉も御座いません。いらっしゃいませお客様。本日はご宿泊でしょうか?」


透矢と舞が宿の第一印象を口にしていると、店の奥から白髪交じりの40代半ばほどの男が出てきた。


「あぁ。2人部屋を頼む」


「2人部屋は1泊15Gとなります。お食事は如何されますか?」


「頼む。部屋で休んでいるから、準備が出来たら呼んでくれ」


「かしこまりました。お食事は1人5Gとなります。お部屋は2階一番奥の左側の8号室を御使用ください」


「わかった」


透矢は金を店主に渡し、階段を上って行った。




「ん?俺たちの他にも客がいるようだな?」


階段を上ってすぐの右側の部屋なので、透矢たちの部屋とは対角に位置するということになる。


「ここは1号室ですね」


「シャル。中にいるのがプレイヤーかどうか分かるか?」


「相手を目視しないと無理ね」


シャルはお手上げ!というジェスチャーをしながら首を振った。


「そうか。まぁメシ食ってる間に下に降りて来るかもしれんし、今は放置するか」


それに、もしもこいつがプレイヤーでイベント攻略の邪魔になるようなら、その時は排除すれば良いだけだ。




「ほぉ?値段の割りに中々いい部屋じゃないか?」


透矢たちの1号室は2人部屋だけあって8畳ほどの広さがあった。


空室を覗いてみるとここより少し狭かったので、恐らく1人部屋が6畳くらいなのだろう。


部屋の中にはダブルベッドとテーブルとイスくらいしか物が無いので、かなり広く感じられる。


これなら2人でも快適に過ごせそうだ


さらには、意外なことに小さいながらも風呂が付いていた。


舞は感激の余り「お風呂に入って来ます」と言い残し、透矢の返事も待たずに行ってしまった。


「ここはゲームの中で、体はアバターだというのに、風呂に入る意味があるのか?」と、透矢が首を傾げていると


「女の子はお風呂が好き。理屈じゃないのよ!」と言い残してシャルも風呂場に向かって飛んで行ってしまった。


透矢は「そーゆーものか」と、風呂の魔力に恐れ戦いていた。




「・・・申し訳ありません透矢様」


ベッドに腰掛けている透矢の前に、舞は裸のまま土下座していた。


「綺麗好きなのは良い事だが、それはそれ。これはこれだ。俺の許可も得ずに先に風呂に入るなんて、お仕置きが必要だよな?」


「はぅ~」


舞はその後、お仕置きと称して透矢に奉仕を命じられた。




「中々良かったぞ?」


「ありがとうございます。透矢様に悦んで頂けて何よりです」


透矢に褒められた舞は心の底から嬉しそうに微笑んだ。


「続きは食事の後だ。さっさと服を着て来い」


「え?・・・キャー!」


透矢に言われて自分が裸のままだったことを思い出した舞は、顔を真っ赤にして胸と股を隠しながら風呂に戻っていった。




透矢たちが食堂に行くと、店主が待ち構えていた。


「現在コックが不在なもので、僭越ながら私がお食事をご用意させていただきました。お口に合えば良いのですが」


メニューは、パンとシチューとサラダ、それとワインだ。


質素と言えなくも無いが、たったの5Gではこれでも立派なくらいだろう。


味の方も5Gにしては十分な出来栄えだった。


「・・・なぁ?俺たちの他にも誰か泊まっているみたいだが、そいつはメシを食わないのか?」


透矢は周りを見渡して、他の席に誰も居ないことを指摘した。


「部屋でお取りになるとのことなので、後ほどお持ちする予定です」


「そいつは男なのか?女なのか?年齢はいくつくらいなんだ?」


「申し訳ありません。他のお客様のことを無断でお教えする訳には参りませんので」


「そうか。いや、ちょっと気になっただけだ。さっきの言葉は忘れてくれ」


そして透矢たちはそのまま食事を終えて部屋に戻った。


食事を終えた透矢は、再び舞を抱こうと思っていたのだが、どーやら透矢が風呂に入っている間に疲れて眠ってしまったらしい。


「まぁ今日くらいは許してやるか」


自覚は無かったが透矢も予想以上に疲れていたらしく、ベッドに横になるとすぐに眠ってしまった。


・・・そして翌朝目覚めると、隣で眠っていた筈の舞の姿が忽然と消えていたのだった。

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