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第6話 ブルセラショップ

イベント攻略に臨むに当たって最低限揃えておきたい装備は、遠距離攻撃手段としての弓(300G)と念の為に多めに矢×100本(50G)。


さらに、ダメージを極力抑える為の防具として、旅人の服(200G)、皮の胸当て(400G)、皮のブーツ(250G)、グローブ(150G)くらいは最低限購入しておきたい。


つまり1350G必要ということになるのだが、さらにポーションも買わなければいけないので、出来れば1500Gは欲しいところである。


しかし手持ちの全財産は、舞から貰った金が300G、ナイフが1本(75G)、ショートソード×6本(600G)なので、ギルドの討伐依頼報酬を足しても全然足りなかった。


ブーツとグローブは諦めるしかないかと思い始めていた時、透矢はまだ他にも売れる物が残っていたことを思い出した。


それは、布の服×5着と下着上下×7組である。


服が下着よりも2着少ないのは、舞が装備中(ノーパン&ノーブラ)で、1着は俺が舞を襲う際に破り捨ててしまったからだ。


その場のノリで勿体無いことをしてしまった。


ダメ元で防具屋のおっさんに値段を聞いてみたら、服は1着25Gで買い取れるが、下着は無理だと言う。


理由を聞いてみたところ「アイテム名を見れば分かる」とだけ言われた。


首を傾げながらメニューリストのアイテム欄を見たところ『舞のシミ付きパンツ』という謎のアイテムを発見した。


「・・・何だこれ?」


「分かったか?そーゆー類の特殊アイテムはウチじゃ買い取れん。ここはあくまでも『防具屋』なんでな」


「・・・確かに『防具屋』にこんなもんが売ってたらドン引きだわ」


透矢は仕方なく「金が出来たらまた来るよ」と言い残して店を出た。




「シャル。このゲームにブルセラショップってあるのか?」


「・・・あるわよ。でもあれって、どーしてもデスペナの無限ループから脱出出来ない女性プレイヤー救済の為に作った物だった筈なんだけど・・・製作者もまさか初日から男の食い物にされるとは思わなかったでしょうね?」


「そーか?女が男に貢ぐ為に、下着やカラダを売るなんて現実でも良くある話だろ?」


「・・・まぁ否定はしないけど」


シャルは半眼で透矢を見詰めているが、透矢の方に気にした様子は無かった。


「最初は「なんて金にシビアなゲームなんだ」と思ったが、意外と抜け道が用意されていたんだな」


「その辺はプレイヤー次第ね。実直にモブ狩りして稼ぐも良し。PKして他プレイヤーから奪うも良し。トーヤみたいに女の子を使って稼ぐも良し。って感じね」


「どれも一長一短だがな。モブ狩りはレベルは上がるが実入りが少ない。PKはライバルを蹴落とせるが、恨まれていつか殺される可能性がある。女に稼がせて楽に儲けていると、今回みたいな戦闘イベントは攻略出来ない。つまり、臨機応変にやるのが一番ってことさ」


「そうね。まぁ、私はサポートピクシーだからね。それがトーヤのプレイスタイルなら、私はそれをサポートするだけよ」


「おう。これからもよろしく頼むぜ相棒?」


「あ、相棒?・・・私が?」


「だってそーだろ?どんなに舞を調教したとしても俺を裏切る可能性を0にすることは出来ないけど、サポートピクシーのシャルが俺を裏切って俺に不利になるような行動をするとは思えん。てことは、俺たちは一蓮托生の相棒ってことだろ?」


「わ、私は透矢様を裏切ったりなんてしません!」


今まで透矢とシャルの会話を邪魔しないように傍で控えていた舞だが、流石に『透矢を裏切るかもしれない』という汚名だけは看過出来なかったようだ。


「・・・そーね。私『だけ』はトーヤを裏切らないわ」


シャルは舞を挑発するように『だけ』を殊更強調して言った。


「・・・シャルちゃん?透矢様は『私の』御主人様よ?」


「ふんっ。それがどーしたの?トーヤは女好きだからこれからも貴女みたいな『愛人』は増えるだろうけど、私は透矢にとって『唯一』の相棒よ?」


「ぐっ・・・」


図星を指されて怯む舞と、勝ち誇った顔のシャル。


「はぁ・・・舞。さっき言ったのは、あくまでも極論だ。俺もお前が俺裏切るとは思ってなどいないよ」


透矢は溜め息をつきながら、妙な雰囲気になった2人を仲裁した。


「ごめんなさい透矢さまぁ~」


舞は謝りながら透矢の体にその豊満な胸を押し付け、透矢からは見えないようにシャルに向かって「ベーッ」と舌を出した。


「ぐぬぬっ。ただの脂肪の塊のくせに・・・」


そうは言いつつも、つい自分のささやかな谷間を見下ろさずにはいられないシャルだった。




「ここがそーなのか?」


舞とシャルの女の戦いから30分後、やっと噂の店に到着した・・・筈なのだが、透矢の目の前にあるのはその辺にある普通の民家と同じにしか見えない。


「そーよ。プレイヤーに見付からないように、民家に偽装されてるの。あと、写真付きの方が高く売れるから、今のうちにそこの『ノーパンノーブラ』女に着させた方が良いわよ?」


シャルはさっきの意趣返しに、普段なら聞かれなければわざわざ教えないような情報まで自ら進んで教えた。


どーせなら店員の前で生着替えをさせてやりたいところだが、もしかしたら透矢が渋るかもしれなかったので、写真がバラ撒かれるだけで妥協することにしたのだ。


「まぁ下着写真くらいならモテない男どもに恵んでやるか。舞も良いな?」


「・・・はい。恥ずかしいですけど、透矢様の為なら我慢します」


舞は透矢に手渡されたパンツを履き、服を着たままモゾモゾとブラを装着した。


「準備出来たか?それじゃー店に入るぞ?」




店の中は薄暗く「如何にもアヤシイ商品を扱っています」という雰囲気に満ちていた。


「ふーん。本物のブルセラショップになんて行ったことがないから分からんが、アングラな雰囲気は感じるな」


透矢が物珍しそうに店内を見回していると、店の奥から30過ぎの太った小男が出てきた。


「あっ!ラッキーよ透矢。実はこの店の店員って日によってランダムなんだけど、あの男は一番の当たりよ!」


シャルは男に聞こえないように透矢に耳打ちした。


「そーなのか?」


「うん。あの男は出現率10%のレア店員なの。買い取り金額が一番高いし、気に入った娘の下着なら自分用にさらに高値で買い取ってくれることもあるわ」


「へぇ。それは期待出来そうだな」


「いらっしゃいませ。本日はご購入ですか?それとも買取ですか?」


カウンターの前に立っているのは俺なのだが、男は俺の後ろに控えている舞のことが気になるようで、チラチラと頻りに視線を送っている。


「買取だ。この女の下着を売りたい」


透矢が後ろの舞を指で指しながら答えると、男は満面の笑みを浮かべた。


「ありがとうございます。それではカウンターに商品をお出し下さい」


透矢はアイテムボックスから『舞の使用済みブラジャー』×6と『舞のシミ付きパンツ』×6を取り出してカウンターに乗せた。


「むぅ。随分質素な下着ですね。・・・こ、これは若い娘の『シミ付き』じゃないか!・・・写真付きの上下セットで300Gでどうでしょう?」


男は下着を見た瞬間は不満気な表情だったが、アイテム名を見た途端、興奮気味に価格を提示してきた。


一方、透矢は男の示した金額に驚いていた。


いかに女の下着といえども、所詮初期装備の一部なので、高いと言っても精々100Gくらいだろうと思っていたからだ。


「女の店員だったら、この半額以下だったわよ?」


透矢の考えていたことを読んだかのようにシャルは耳打ちした。


「そこまで違うのか?」


「そりゃそーよ。例えば透矢が女だったとして、この男に自分が履いたパンツを売ろうって思える?他の日に行けば女の店員だっているのよ?」


「あーなるほどね。店員が女なら、下着を見られたり写真を撮られたりしてもそこまでの抵抗感はないが、男が相手なら、アバターとはいえ嫌悪感はあるだろうな」


「そーゆーこと。でも、それを我慢すれば女店員の時の数倍の価格で売れるって訳よ」


「しかし、俺みたいに男が一緒だったら大した意味がないんじゃないか?」


「さっきも言ったけど、ここは基本的に初期装備と50Gだけじゃどうにもならなかった女の子の為の救済用のお店なの。トーヤみたいに初日からPKで下着を量産して売りに来るなんていうのは想定の範囲外なのよ」


「そーか?これだけ自由度の高いゲームだし、このくらいは誰でも思い付くだろ?」


「仮に思い付いたとしても、それを実行するのは難しいわ。PKだけなら兎も角、身包み剥いで行くなんて中々出来ないわ。トーヤをPKしたあの男だって服だけは残して行ったでしょ?ゲームの中とは言っても素顔でプレイしているんだし、そこまでやったら現実で報復されるかもしれないって考えてしまうわ」


「・・・ならカップルだったらどーだ?それなら問題ないだろ?」


「問題大アリよ!そもそも、カップルが揃ってログインしている可能性がかなり低いし、居たとしても、普通の男は自分の彼女の下着を売って儲けようなんて考えないし、女の子の方だって納得しないわ」


透矢は勝ち誇った笑みを浮かべたのも束の間、すぐにシャルに反論されてしまった。


「なんだと?まるで俺と舞が特殊だとでも言いたげだな?」


「・・・偶然会ったクラスメイトを誑かしてその場で抱いた男と、そんな男に進んで言いなりになってる女のどこが普通なのよ?アンタらが特殊じゃなかたら、誰が特殊だって話よ?」


「・・・しまった。反論出来ねぇ」


今の状況を思い返し、透矢は自分たちが特殊なのだと認めざるを得なかった。


「・・・・・・あのぉ、お客さん?こちらの品物はお売り頂けるのでしょうか?」


目の前でヒソヒソと小声で喋っていた俺たちに、堪らず男が話し掛けてきた。


「あ、あぁ。すまない。もちろんOKだ」


「では写真を撮りますので、女性はこちらに来てください」


「はい」


舞は男の指示に従って撮影スペースに立った。


「売り物と同じ物をしている写真でないと意味がないので、こちらを身に着けてください」


男はそう言って舞に下着を差し出した。


「大丈夫だ。今も同じ物を履かせて来ている」


「・・・ちっ。では服を捲って下着が見えるようにしてください」


透矢が横からそう言うと、男は生着替えを見たかったのか、小さく舌打ちをした。


「・・・これで良いですか?」


舞は恥じらいながら、おずおずとシャツとスカートを僅かに捲った。


「ぐふっ。いえ、もう少し捲ってください。下着がしっかり写っていないと何度も撮り直しになりますよ?」


「は、はい・・・」


舞は早く終わらせたい一心で、胸の谷間がハッキリと見えるくらいぐいっとシャツを持ち上げ、ヘソが覗くほどスカートを捲り上げた。


「おぉー!で、では撮りますよぉ!」


男は大興奮でパシャッ!パシャッ!と写真を『7枚』撮影した。


「お疲れ様でした。お金を用意して来ますので、少々お待ちください」


「・・・おいちょっと待て!今1枚多く写真を撮らなかったか?」


透矢は男が何食わぬ顔で店の奥に引っ込もうとするのを制止した。


何故なら、男が撮影に気を取られている間に透矢はシャルにある情報を聞いていたからだ。


それは「男が自分用に買い取ろうとする分は価格交渉が可能」ということ。


「・・・あっ。す、すいません。手元が狂ってしまたようですね。そ、そうだ!もし良かったら今そちらの女性が身に着けている下着もお売りになりませんか?もちろんお詫びと致しまして先ほどの金額の1割増で買い取らせて頂きますので」


「・・・話にならねぇな。お前の誠意はたった30Gぽっちか?」


「で、では5割増の450Gで如何でしょう?」


「おいおい、美少女の脱ぎたてホカホカのパンツだってことを忘れてねぇか?10倍だ!」


透矢は自分でさえあり得ないと思うほどの超高額を提示した。


「そ、そんな馬鹿げた金額いくらなんでも法外すぎる!2倍だ!」


「さっきはお預け喰らっちまったこの女の生着替えを、ローアングルから見ても良いぜ?」


男は透矢の言葉に釣られて舞に視線を移し、ゴクリと生唾を飲み込んだ。


「・・・3倍だ。これ以上は手持ちがない」


「あんっ!だ、ダメです透矢様。ひ、人が見てます」


透矢は徐に舞のスカートの中に手を突っ込んだ。


「・・・これならどーだ?染み付きなんてケチ臭いもんじゃないぜ?」


男は鼻息を荒くしながら、床に出来た水溜りを凝視している。


「ふぅ!ふぅ!・・・だ、だが、もう手持ちがないと言っただろう?」


「店の金があるだろう?ちょっと借りてバレる前に戻せば良いだけの話だ」


「・・・4倍、いや5倍だ。これ以上は本当に1Gたりとも無い。嘘だと思うなら店の中を探してみろ!」


「ふんっ、まぁ良いだろう。今回はそれで手を売ってやる。舞、下着を脱いでこの男に渡せ」


「はい。透矢様」


舞はシャツの中に手を入れてブラを抜き取り、必死に床に這い蹲ってスカートの中を覗こうとする男に怖がりながら、ゆっくりとパンツを下ろしていった。


「ぐふふっ!若い娘の脱ぎたてパンツは香りも味も一味も二味も違う!」


舞から下着を受け取った男は、匂いを嗅いだり、舐めたりした。


「おいっ!お楽しみは後にしろ!1800Gと1500Gで合計3300Gだ!」


「分かってるよ!ちっ、今日はなんて日だ!久々にいい女が来たと思ったら、とんだ散財だぜ!金を持ってさっさと出てってくれ!」


男はそう喚いて店の奥に引っ込んでしまった。


「・・・トーヤって何者なの?普通は2倍まで吊り上げられれば上々よ?どんなに交渉上手な人でも3倍がやっとな筈なのに、アンタは設定上限の5倍の額を引き出しちゃったわ」


「はははっ。最後の『アレ』が決め手だったな」


「そーね。まさか、交渉中に商品に手を加えて、商品の価値そのものを底上げするなんて思ってもみなかったわ」


「とはいえ、あの七面倒な交渉を毎回やらなきゃいけないのか・・・」


透矢はウンザリした様子で呻いた。


「それなら大丈夫よ。アンタは一発で上限を引き出しちゃったから、次からは今回の倍率がそのまま適用されるわ」


「へぇ、それは助かるな。結果の分かりきった交渉なんて時間の無駄だと思ってたところだ」


「本来は「何回も店に通ってあの男を観察し、交渉時に的確にツボを突く」っていうのがこのイベントの仕様だったのに、まさか一発でクリアしちゃうなんて・・・」


透矢の女に関する思考と行動力に、シャルは賞賛するどころか、逆に呆れてしまった。

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