第4話 最初の獲物はクラスメイト
冒険者ギルドの目の前にある店に入ってポーションの値段を聞くと、シャルが言っていた通り1個10Gだった。
試しに値切ってみたが、店の親父は鋼鉄よりも頑なだったので早々に値切りを諦め、全財産である40Gでポーションを4個購入した
次に3軒隣にある武器屋に入った。
店主に弓の値段を聞くと、一番安いので300Gとのこと。
ちなみに矢は別売りで、一番安い木の矢10本セットが5Gだった。
余談だが、透矢が現在装備しているショートソードは200Gで売られていた。
そして買取は売値の半額らしい。
ボッタクリすぎだろと思うが、NPCショップならこんなもんかと納得することにした。
防具に関しては買いたい物が多過ぎて途方にくれてしまった。
今着ている布の服よりも丈夫な旅人の服(仮称)。
皮の鎧、ブーツ、コートなど言い出したらキリが無い。
これもPKを誘発する為の罠なのかもしれない。
とてもじゃないが、まともにプレイしてたら装備一式を揃えるだけで何日掛かるか分からない。
透矢はそう考え、チャンスがあれば積極的にPKをしていこうと決心した。
1人頭最低150G奪えると仮定して、10人ほど殺れば最低限の装備は揃えることが出来る筈だ。
「・・・ん?なんかチラホラとプレイヤーっぽいのが目に付くようになってきたな?」
「そうね。今は200人くらいがログインしてるわ。その所為じゃない?」
「・・・結構増えたな。初心者狩りするなら、人目の少ない今がチャンスかもな」
何故なら、首尾良くPKが成功しても、見ていた奴らに後から袋叩きにされたら意味がないからだ。
「まぁ、適当に依頼をこなしつつ、ソロでモブ狩りしてるやつを見付けたら隙を見て殺すことにするか」
透矢はまだ見ぬ獲物に舌舐めずりをしながら東門に向かって行くのだった。
フィールドで狩りを始めて30分、漸く初の獲物が来た。
流石のシャルも他のプレイヤーの場所までは分からないようなので、適当にモブ狩りしつつ獲物が現れるを待つしかなかったのだ。
「・・・どーやら女みたいだな」
遠くて顔はハッキリ見えないが、髪が長いし、下が生足&ミニスカートだ。
「もし可愛かったら、殺した後でお楽しみタイムと洒落込もう」
透矢は今まで門から50mほど離れた場所にある岩陰に隠れていたが、町に帰る風を装って女に近付くことにした。
「えっと・・・御堂くん・・・だよね?」
目の前から歩いてきた少女は透矢に向かって声を掛けて来た。
「え?・・・もしかして、中野さん?」
透矢は如何に自然に女に近付いて殺そうかという事ばかり考えていたので気付いていなかったが、この少女は顔見知りだったらしい。
「はい。中野舞です」
透矢は、まさか顔見知りがいるなどという可能性は全く考えていなかった為、一瞬パニックに陥った。
しかし、このゲームをクリアするまでの間にメス奴隷としてタップリ調教すれば問題ないと思い直し、作戦を多少変更して続行することにした。
「まさか知り合いがいるとは思わなかったな。そーだ!もし良かったらフレンド登録しない?」
「あっはい。こちらこそお願いします」
メニューリストを開いてフレンド登録の申請を少女に送り、了承されたのを確認して透矢はほくそ笑んだ。
「・・・ありがとう。初めての相手が中野さんで嬉しいよ」
「い、いえ。私も前から御堂くんとお話ししてみたいと思っていたので・・・」
そう言って舞は顔を赤くして俯いてしまった。
透矢は少女の様子を見て自分に気があるようだと確信し、この場で可愛がってやることにした。
「・・・ところで中野さん。実はGを効率的に稼ぐ良い方法があるんだけど、良かったら協力してくれない?」
「は、はい。もちろんです」
透矢に笑顔で話し掛けられた少女は、さらに顔を赤くしながら返事をした。
「デスペナのことは知ってる?」
「はい。データが初期化されちゃうんですよね?」
「そうそう。装備が全部初期装備に戻って、所持金も50Gに戻ってしまうんだ。でも、逆にそこがミソなんだよ」
「・・・?どーゆーことですか?」
「つまり、中野さんがお金やアイテムの全てを俺に預けた状態でデスペナを受けた場合、30分後に再び武器とお金を持って復活出来るんだよ!」
ここで『預ける』という自発的行動の表現をしたり、『死』というネガティブな表現を避けて『デスペナ』と言うのがポイントだ。
「・・・あっ!ホントだ!御堂くん凄いです!」
「いやいや、誰でも思い浮かぶことだよ。ただ、この方法は『信頼』出来る人とじゃないと成立しないんだ」
「信頼・・・ですか?」
「そう。この方法はレベルが低い時にしか実行出来ないのに、ここには見ず知らずの他人同士しかいない。中野さんは知らない『男』にそんな提案をされて、アイテムやお金を預けられるかい?もしかしたら騙されて持ち逃げされるんじゃないか?って思ってしまうんじゃないかな?」
「・・・そ、そーですね。無理だと思います」
「でも、俺と中野さんは『特別』だ。2人が今ここで出会えたのはきっと『運命』だよ!2人で協力してゲームをクリアしよう!」
「私と御堂くんが『特別』・・・?」
もはや言葉は必要ない。
別に透矢はこの少女のことを『好き』だとも『愛してる』とも言ってはいないが、少女の方で自分に都合の良い様に解釈することだろう。
「・・・私、どーすればいいの?」
「まずはアイテムを全部俺に預けて貰えるかな?」
「うん。ちょっと待ってね」
少女はアイテムボックスからポーション5個とナイフを取り出し、透矢に差し出した。
「あ、あの・・・服も外せるみたいなんだけど、これも渡さなきゃ駄目・・・かな?」
少女は顔を真っ赤にしながら聞いてきた。
「女の子にそんなこと頼めないよ。武器とポーションがあれば十分だから」
透矢はさっさと全部脱げ!と言いたかったが、それでは破いたり脱がしたりする楽しみが減ってしまうので、ここは我慢することにした。
「う、うん。ありがとう御堂くん」
少女は透矢の言葉が紳士的な理由によるものだと勘違いし、憧れの王子様でも見つめるかのような顔をしていた。
「それじゃー始めるよ。中野さん手を出して」
「うん」
おずおずと差し出してきた手を握り、舞に貰ったナイフで指を浅く切る。
「んっ」
痛覚が緩和されているにも関わらず、ナイフで切った程度で艶っぽい声を出す少女は真性のMなのだと思われる。
「中野さん大丈夫?痛かった?」
「ううん。大丈夫。続けて?」
舞はその後もナイフを振るう度に喘ぎ声を我慢するような声を上げ続け、ついにHPが0になった。
その瞬間、舞の体から力が抜け、地面に倒れそうになるのを腰に手を回して支える。
「はぁ、はぁ・・・」
「中野さん、苦しそうだけど大丈夫?」
快感によがっていただけなのはバレバレだが、透矢は気付いていないフリをして好青年を演じ続けた。
「は、はい・・・そ、それよりも、私今御堂くんに、だ、抱きしめられちゃってます」
「ごめんね。中野さんが倒れそうになったから、つい。駄目・・・だったかな?」
「う、ううん。むしろ役得・・・かも」
「・・・時間も勿体ねぇし、もう良いか・・・わりぃ中野さん。俺もう我慢出来ねぇや!」
透矢は右手に持っていたナイフをアイテムボックスに収納し、舞の服の襟口を掴んで一気に引き裂いた。