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第16話 依頼

「えーい」


バリバリバリッ!と雫の攻撃魔法(ツッコミ)『サンダーボルト』が透矢たち3人に直撃し、その結果、既に『女狩り』によってPK目前まで減少させられていた綾乃のHPは完全に0となった。


「・・・あっ!」


仲間に向かって攻撃魔法(ツッコミ)を発動させたばかりか、件の少女をその場のノリで自分がPKしてしまったことに雫は気付き、頬を引き攣らせた。


「ビリッと来たぁ・・・おい雫、放置したのは悪かったとは思うが、ちょっと突っ込みが厳し過ぎないか?」


痛覚はかなり遮断されているので透矢はさほど痛みを感じてはいなかったが、アリスと綾乃の2人といちゃついていたところへ不意に電撃が襲って来たので、体がビクッと震えて驚いていた。


「ごめんなさい・・・」


透矢に叱られた雫は、しゅんとなって顔を俯かせた。


「そんなに気にしないで良いのよ雫ちゃん。どの道やって貰う予定だったんだから」


「・・・うん」


()られた当人の綾乃が笑って許してくれたので、雫は少しだけ元気を取り戻した。


「・・・あ、あのー?なんか、私の体が動かないんだけど・・・?」


そんな微笑ましい少女たちを尻目に、綾乃同様アリスも地面に転がっていた。


「・・・雫にPKされた訳じゃないよな?てことはアレだな。運が良いと言うべきか、悪いと言うべきか・・・」


「もう!1人で納得してないで、教えてよ透矢くん!」


遥か頭上で腕を組んで首を傾げている透矢に向かってアリスは足元から吼えた。


「雫の使う『サンダーボルト』は5%の確率で相手を麻痺させるんだ。アリスが動けないのはそのせいだ。でも安心しろ。麻痺のレベルは低いから30秒もすれば動けるようになるさ」


「そ、そーなの?はぁ、良かったぁ」


原因不明の金縛りに一時は不安になったアリスだったが、透矢にもうすぐ動けるようになると教えられて安堵した。


「うぅ・・・お姉ちゃん、ごめんなさい」


「いいのよ雫ちゃん。私たちの方こそ、雫ちゃんたちを除け者にしちゃってごめんね?・・・むぅ、頭を撫でてあげたいけど、麻痺してて動けない・・・」


「・・・あははっ」


アリスを麻痺させてしまったことに気付き、雫は再び落ち込んでしまったが、当のアリスが全く気にしてなどいない様子だったので、雫にも笑顔が戻った。


その後、メイデンの少女2人も綾乃と同じ理由でPKして欲しいと透矢に懇願してきたので、今度こそ雫の魔法ではなく接近戦用に所持している日本刀を使って少女たちの手を軽く切り、HPを消滅させるのだった。




30分後、3人の少女たちのアバターは次々と光の粒となって消滅し、数秒後初期装備の簡素な服を纏って復活した。


「おかえり。ほらっ、預かってたアイテムと金だ。それと、こいつはあの男たちから奪った金とアイテムだ。慰謝料代わりに貰っとけよ?」


雫は綾乃のデスペナ中に、透矢はPKする前に2人の少女の所持品を預かっていた為、復活後それぞれの持ち主に返却した。


さらに透矢は男たちから奪った金とアイテムを取り出して、3人の少女たちに受け取るよう言った。


「いえ、それは透矢さんに全て差し上げます。・・・貴女たちも良いわよね?」


「はい。私もそれが良いと思います」


「あんな男たちが使っていた物なんて、触れたくもありませんし」


綾乃の問いに2人の少女たちも同意した。


「・・・ならアイテムは兎も角、金だけでも受け取っておけ。レベルが1に戻ってHPも減っちまったんだ。これからポーションが大量に必要になるだろう?」


「・・・それもそうですね。では、お金だけ有り難く頂きます・・・って、凄い額じゃないですか?」


透矢の言い分に納得した綾乃は、受け取った金をきっちり3等分に分配しようと金額を表示させた瞬間、その数字を見て驚愕した。


「あぁ、俺もこれは予想外だった。やつら、相当溜め込んでやがったみたいだな」


今現在の平均的なプレイヤーの所持金は3000G前後と思われる。


これはあくまでも町を歩いているプレイヤーの装備の平均価格から透矢が予想したものであり、公式なデータという訳ではない。


だが実際、プレイヤーの多くが新たな装備購入に必要な資金が貯まると、最低限の生活費だけを残してほぼ全財産投入するというのが一般的だ。


何故なら、このゲームには銀行のような個人の金を個別に預かってくれる施設が存在しないのに、一度でもMOBに()られたり誰かにPKされてしまったら、折角金を貯め込んでいても、消滅するか奪われるだけで何の意味もないからだ。


にも関わらず、透矢が10人の男たちから回収した合計金額は30万G弱だった。


個人個人で多少のバラつきはあったが、それでも平均で1人3万Gもの大金を所持していた計算になる。


3万Gといえば、何時ぞやの奴隷商会ギルドのオークションでテレサやステラクラスの美少女NPCを落札出来るほどの大金だ。


ヤりたいだけなら『娘々』に通うなり、奴隷NPCを購入するなりすれば、今回のような逆襲されるリスクもなかっただろうに・・・と透矢は思索したが、今更詮無い事だとこれ以上考えるのを止めた。


「いくらなんでも、こんな大金を受け取る訳にはいきませんよ!やはり透矢さんにお返しします!」


「・・・断る!俺はもうお前にあげたんだ。どうしてもいらないと言うのなら、その辺に捨てれば良いだろ?30分放置すれば自然消滅する筈だ」


綾乃は慌てて金を透矢に突っ返したが、透矢は頑として受け取らなかった。


「こんな大金を捨てられる訳ないでしょうに・・・わかりましたよ、もう!」


「・・・じゅ、10万G?」


「・・・こんな大金初めて見たわ・・・」


綾乃はついに透矢に金を返すことを諦めて2人の少女たちに10万Gずつ手渡し、金を受け取った少女たちはその額を見て一様に驚きを露わにした。




「・・・それにしても、他の服は寝る時用のネグリジェしか持ってないから、町に着くまではこのままで過ごすしかなさそうね?」


金の件はもう済んだ事として頭を切り替えた綾乃は、野暮ったい初期装備の服を摘みながら不満気に口を尖らせた。


「俺は別にネグリジェでも気にしないぜ?」


透矢は腰に手を回して尻を撫でながら、綾乃の瞳を見つめた。


「・・・あんっ、ダメよ透矢さん。そんなことしたら、透矢さん以外の男の人にも見られちゃうじゃない・・・」


綾乃は透矢のされるがまま尻を撫でられながらも、ネグリジェを着て外を歩くことにはやんわりと拒絶した。


「それもそーか。綾乃みたいな美少女がそんな格好で外を歩いてたら、町に着くまでに何人の男に襲撃されるか分かったもんじゃないからな?」


「・・・わ、私だってネグリジェくらい着てるんだから!」


再び目の前でいちゃつき始めた綾乃に、アリスは妙な対抗心を抱いたようだ。


「・・・あれ?確か、アリスってパジャマ派じゃなかったっけ?」


そんなアリスの宣言に、綾乃は首を傾げた。


「さ、最近ネグリジェ派になったのよ。宿屋に置いて来ちゃって今は持ってないから、見せられないのが残念だわ・・・」


「・・・へぇ、そーなんだぁ?アリスのことだから、きっと凄く可愛いやつなんでしょうねぇ?」


綾乃にはアリスのバレバレの嘘などお見通しだったので、新しい玩具を手に入れた子供のような顔で、アリスを巧みに誘導し始めた。


「・・・ま、まぁね?ピンクのヒラヒラスケスケのやつで、すっごく可愛いのよ?ホントみんなに見せられないのが残念でならないわ・・・」


アリスは綾乃の姦計に陥っているなど露にも思わず、口から出任せを吐き出し続けた。


「・・・そんなに可愛いなら、透矢さんとの初めての夜には、当然それを着るのよね?」


「・・・え?」


思わぬ方向に話を振られたアリスは、漸く綾乃にハメられたのだと気付いたが、もはや後の祭りであった。


「透矢さんも、アリスのスケスケネグリジェ姿が見てみたいですよね?」


「そーだな。アリスがそこまで言うんだ。きっとグラビアアイドルも真っ青なエロ可愛い美少女が拝めるんだろうな?」


透矢は綾乃の振りに乗っかり、さらにアリスを追い詰めた。


「・・・と、当然よ!私をその辺の胸が大きいだけのグラビアアイドルなんかと一緒にして欲しくないわね。・・・まぁでも、折角透矢くんにお披露目するなら新品に買い換えたいから、しばらく待ってて貰えるかしら?」


アリスは内心歯軋りしながらも、何とかこの場を切り抜けようと、頭を振り絞って言い訳を口にした。


「そーよねぇ。着古しを男の子に見られるのは恥ずかしいわよね?その気持ちは私にも凄く良く分かるわ」


「・・・で、でしょ?綾乃なら分かってくれるって、私信じてたわ!」


アリスは、漸く綾乃が苛めるのを止めてくれたのだと思って安堵した。


「・・・それでいつ頃になるのかしら?明日?明後日?」


そんな訳がなかった・・・


「・・・に、人気商品で今は売り切れみたいだから、次の入荷がいつになるかは、ちょっと分からない・・・かなぁ?」


アリスは、綾乃の攻撃がまだ終わっていなかったことに気付き絶望した。


「そっかぁ・・・それは残念だねぇ」


「・・・そ、そーね?ま、まぁ気長に待ってて貰えるかしら?」


アリスは冷や汗を流しながら、早く終わってくれと祈り続けた。


「・・・でも、そーゆーことなら、私を先にして貰おうかしら?」


「・・・え?な、何のこと?」


アリスは、綾乃の言っていることの意味が分からず聞き返した。


「だって、そのネグリジェがないと、アリスは透矢さんとセックス出来ないでしょ?最初はアリスに先を譲ってあげようと思ってたんだけど、ネグリジェがいつ手に入るか分からないなら、私から先に透矢さんに可愛がって貰っちゃおうかな?って」


綾乃は小悪魔みたいな笑みを浮かべてウィンクした。


「・・・そ、そーゆー魂胆だったのね?卑怯よ綾乃!これは誘導尋問だわ!今までのは全部無効よ!」


アリスは漸く綾乃の思惑に気付き、何としても彼女の抜け駆けを阻止すべく、無効試合を声高に叫んだ。


「えぇー、私そんなことしてないよー?私はただアリスに初体験の時に着る衣装を聞いただけじゃない?」


「うるさーい!無効ったら無効なのー!」


綾乃はクスクスと笑い、アリスは駄々っ子のようにゴネていた。


「・・・綾乃、もうその辺にしてやれ。アリスをからかうのが楽しいのは俺も認めるが、仕舞いにゃアリスが泣き出しかねんぞ?」


「はーい!ごめんね、アリス。もう苛めないから機嫌を直して?」


「・・・うぅー・・・」


透矢に注意され素直にアリスに謝った綾乃だったが、散々苛められ警戒心MAX状態になったアリスには届かなかった。


「・・・アリス、綾乃も謝ってるんだ。もう許してやたらどーだ?」


透矢はアリスを抱きしめ、頭を撫でながら説得を試みた。


「・・・あっ、良いなぁアリス。私も透矢さんにナデナデされてみたい」


「・・・わかった。許してあげる」


綾乃が演技ではなく本気で羨ましそうな視線を向けていることに気付き、アリスは溜飲を下げた。


「そーか。アリスならそう言ってくれると信じてたぞ?」


「・・・その代わり条件があるわ。も、もうしばらくナデナデを続けなさい!じゃないと許してあげないんだから!」


透矢がアリスの頭から手を離そうとした瞬間、アリスは今までの仕返しとばかりに、綾乃に見せ付けるように透矢に抱きついておねだりした。


「・・・まったく、アリスは甘えん坊だな?」


透矢はそんなアリスの思惑に気付きつつも、アリスが満足して離れるまでの数分間、優しく頭を撫で続けるのだった。




アリスの機嫌も漸く直り、辺りもそろそろ暗くなり始めたので、町に戻るべく透矢たちは歩き始めた。


「・・・ねぇ?今更なんだけど、透矢くんって噂の弓使い・・・なんだよね?」


アリスは隣を歩いている透矢に向かって、ずっと気になっていた疑問を口にした。


「・・・噂ってのがどんなのかは知らないが、そーなんじゃないか?弓を使ってるやつって、今のところ俺以外見たこと無いし。・・・俺は結構便利だと思うんだけどなぁ?」


透矢はゲーム開始当初ならいざ知らず、既に4000人もプレイヤーがいるのに、未だに弓を使っているのが自分だけという現実に、弓って実は不人気なんだろーか?と首を傾げていた。


「オークを一撃で仕留める弓使いがいるという噂です。透矢さん、身に覚えはありますか?」


すると、透矢を挟んで逆隣を歩いていた綾乃が噂の内容を透矢に説明した。


「あぁー!私が教えようと思ってたのにぃー」


「ふふっ、早い者勝ちですよアリス?油断しましたね?」


横から手柄を掻っ攫われた形のアリスは悔しがり、逆に綾乃は勝ち誇った顔をしていた。


「・・・お前ら仲が良いんじゃなかったのか?」


何かと言うと張り合い始める2人に、透矢はその友情に疑いを持ち始めた。


「仲は良いですよ?このゲームを始めて最初に友達になったのが、何を隠そうアリスですから」


「私も同じよ」


「・・・それにしては、さっきから喧嘩ばっかしてる気がするんだが?」


「仲は良いですが、それと『男』は別問題です!」


「その通りよ!綾乃には絶対負けないんだから!」


そう言ってアリスと綾乃は透矢の左右の腕に抱き付きながら、互いに牽制し始めるのだった。


「・・・話を戻すが、その噂の弓使いてのは十中八九俺だろーな。誰かに見られていたとは気が付かなかった・・・俺もまだまだ甘いってことか。これからはこれまで以上に警戒しないとな」


透矢はフィールドに出る際、シャルに命じて周囲にプレーヤーがいないかどうかを常に監視をさせている。


ちなみに、あのお喋りなシャルが今まで一切発言していないのは、この能力を行使するのに集中しているからである。


現在そのサーチ範囲は透矢を中心とした半径30m(レベル×2m)である。


サポートピクシーのサーチ能力はプレイヤーのレベルが15になった時点で覚醒し、以後レベルが上がる毎にそのサーチ範囲も拡大していくらしい。


透矢は今でこそ現時点でのプレイヤー最高レベルのレベル15の1人ではあるが、常に自分がそれを維持出来るなどとは思い上がってはいない。


今後、自分よりも高レベルのプレイヤーが現れ、そいつが遠距離攻撃が得意なプレイヤーだったとしたら、その時点で詰みだ。


これからはシャルのサーチに頼り切ることはせず、常に警戒を怠らないようにしようと、透矢は気を引き締め直した。


「・・・噂は本当だったんだぁ。ちょっと確認したいんだけど・・・とゆーことは、もしかして透矢くんもレベル15の1人なの?」


アリスはプレイヤーの間で都市伝説のような扱いをされていた人物が本当に実在して、今目の前にいることに感激していた。


「あぁ」


透矢は事も無げに肯定した。


「やっぱり・・・実は、透矢くんにお願いしたい事があるんだけど、聞いてくれる?」


アリスは透矢の腕から離れ、改めて透矢に向き直った。


「・・・何だ?」


透矢は急にアリスの雰囲気が変わったことを察した。


「・・・『(アイアン)処女(メイデン)』サブマスターのアリスとして正式に貴方に依頼します。どうか貴方の力を私たちに貸して下さい」


そこにあったのは、先ほどまで友人と戯れて笑っていた少女の顔ではなく、女性プレイヤー600人の命運を背負う大ギルドのサブマスターとしての顔だった。

目の前でいちゃつかれても舞や雫が大人しいのは、既に透矢に抱かれているという自負があるからです。

とは言っても、当然心の中では嫉妬していますがw


それにしても、いつの間にかアリスと綾乃のキャラが当初の設定から大分変わってしまっているんですよねぇ・・・

綾乃はアリス限定のSキャラになってるし、アリスは完全に弄られキャラになってしまっている。

アリスは典型的なツンデレキャラで、綾乃に至ってはただの『女狩り』の被害者Aで透矢の女にする予定すらなかったんですが、気付いたらこんなことになってましたwww

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