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祭り特派員

祭り特派員 8

作者: 風紙文

『という訳で、祭り特派員をやってもらいたい』

「慎んでお断りします」

『断るの早っ!?』

「だってどう考えてもこっちにメリット無いっしょ? 名前聞いただけでもうメンドそうだしー」

『面倒なことは無い。ただ明日の祭りを回って点数を付けるだけだ』

「メンドイじゃん」

『……軍資金は弾もう、だから祭…』

「引き受けた」

『ふっ、聞き分けの良い姪を持つと助かるよ』

「良かったですねー、単純な理由で簡単に心変える姪を持って……あ、てか待ち合わせしてたんでした。この話はまた後でっつう事でー、では」

この街において、待ち合わせの定番となっている時計台。

そこへ続く道で眼鏡の少女は、使っていた携帯電話を閉まった。

「急に電話してきたと思ったら妙なこと言ってきたな、叔父さん」

今の電話の内容を思い返しつつ、腕時計で時間を確認する。

「祭り特派員……か。いくら軍資金出るからって安請け合いしたかなー。ま、全ては軍資金軍資金……と」

確認した時間を見て、少女はしまったと思った。

「やべ、3分遅れてる。ちょっち急ぐか」

少し早足で行こうとした、

「……ま、いいか」

瞬間、普通の速度で歩き出した。

それからのんびり普段のペースで歩き、時計台が見えてきたその2分後。

そこには待ち合わせの相手である、帽子をかぶった少年、

「おや?」

と、茶髪の少年が親しげに話していた。

「ふむ……」

眼鏡の少女は二人に、特にこちらへ背を向ける茶髪の少年に近づき……

「待ち合わせって誰とだ?」

「あたし」

「うぉ!?」

後ろから声をかけ、驚かせたのだった。







「悪いねー、持たせちゃって」

「どうせ元々それが目的で呼んだのは分かってた」

「理解が早くて助かるー」

「もう買い物は終わりだよな」

「うん、さすがにこれ以上は差し支えるからね」

「なら、さっさと帰……あ」

「ん?」

「姉貴に頼まれたんだ、スイカ四分の一カット」

「じゃあ八百屋か、おけおけ、付き合う」

二人は進路を八百屋へと変更して、歩き始めた。

その時、

「あのー、そこのお二人、少しお時間よろしいでしょうか?」

二人の後ろから、声をかける人物の姿があった。

「はい? なんですか?」

「実はですね…」







「はい、毎度」

商店街の八百屋。眼鏡の少女と帽子の少年はそこに訪れ、少年は頼まれたスイカ四分の一カットを購入した。

「じゃ、あたしはここでいいや。荷物持ってくれてサンキュね」

「あぁ、分かった。じゃあな」

持っていた荷物を渡し、買ったスイカだけを持って少年は八百屋を後にした。

八百屋の中には、眼鏡の少女と、八百屋の店主……先刻の電話の主が残った。

「さーてと、話してもらいましょか? 祭り諜報員というの」

「祭り特派員、だ。だが難しい話じゃない。電話でも言ったが、明日の祭りを楽しみ、それを得点にしてくれればいい。それだけだ」

「ふーん、で、軍資金は?」

「それは、祭りを楽しむ為……という訳でさないぞ? 祭り特派員は、全ての屋台を回って得点にする必要がある。つまり軍資金を出しても、そのほとんどが屋台に消える」

「うぇー……マジ?」

「マジだ」

「そっかー……」

やっぱり安請け合いしたなー……と、少女は思った。

しかし、その数秒後、

「あ、良いこと思い付いた」

「ん? 何だ?」

「別にさ、祭り特派員を二人でやっちゃダメってルールは無いでしょ?」

「まぁ、そうだな」

「ならおっけー、アイツの食べられない甘い物とか引き受けて……大体はアイツと割り勘すれば、軍資金も余る余る」

「……考えたな」

「策士と呼んで下さい」

ニヤニヤと不適な笑みを浮かべた少女を見て、店主は肩を落とした。

「まぁやってくれるのならばいい。だが、彼方は賛成してくれるのか?」

「別に賛成させなくても良いんだよ。見つけたら一緒に回って、祭り特派員を探そうとか適当に誘って屋台フルコンプすればおっけだし」

「彼方も大変だな……今日荷物持ちさせられたと思ったら、明日は秘密裏に祭り特派員か」

「あ、そういえばさっきここに来る前に祭り特派員やってくれないかって人に会ったけど」

「あぁ、アイツか。なら彼方も、祭り特派員のことは知っているんだな」

「だね、尚更誘いやすくなったよ」

「まぁ、成功することを、祈っているよ」

「はいはーい。じゃ、今日は帰るねー」


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― 新着の感想 ―
[一言] 一応、現在発表されてる分は読ませていただきました。 面白いです^^ ほとんどのキャラクターが他のキャラクターすべてと繋がっていて、「そうだったのか!」と思わせられる作品でした! ありが…
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