プロローグ この世界の歴史―――世界はこうして滅んだ―――
今からちょうど一千年前―――――
この世界は滅びた。
この世界に住まう人々は、神に見限られた。
かつて共存し、ともに世界を繁栄させてきた神が、まるでカードを裏返したように簡単に、あっさりと人々を見限った。
神は自分達を『悟神族』と名乗り、自分以外の存在、『人間族』『魔族』を見限り、彼らからあるものを奪った。
それは『文明』。
生きとし生けるもの全てが、莫大な時と労力―――――そして生命を懸けて積み上げてきたものを、悟神族は何のためらいも無く奪った。
その行為を口火に、彼らの配下であったはずの『天使族』の大半が反旗を翻して地上の者達に味方し、後に『神滅大戦』と呼ばれる戦争の引き金となった。
この時、すでに人間族と魔族は自分達の主力となる文明、『科学文明』と『魔術文明』の半分を奪われてしまっていた。
そこで、反旗を翻した天使族は自らの力を使い、人間族の『科学文明』、そして魔族の『魔術文明』の残ったものを結合させ、新たなる力を作り出した。
それが―――――『機械魔術』
決して相容れぬはずだった科学と魔術の融合。
その新たなる力を持って、今度は人々が神を見限り、長い戦いの末、彼らの力の大半を封印することに成功した。
しかしその代償と言わんばかりに、文明を奪われたことと相成り、地上は緑が生い茂る原初の姿へと変わり果て、人類も全種族合わせてもかつての人間族全人口の三分の一程度にしか満たなかった。
また、悟神族も滅んだわけではなく、人々の精神エネルギー、『ソル・エナジー』を奪い失われた力を取り戻すために人々を襲い始めた。
かくして人々は、この圧倒的ハンデを抱えたまま神の力を借りずに、また新に文明を築き上げ復興の道を辿ることとなった。
そんな風に一度世界が終わってから、千年後―――――再世暦1000年。
人々は緑を切り開き、僅かな人口ながら国を作り、安息の地を求めて彷徨いながら、時折現れる悟神族と戦い続けている。
そして、そんな悟神族と戦う戦士を、人はこう呼んだ。
禊人―――――――――、と。