翻訳者の休息
【本文】
第八迷宮の水路通信室で、三人の翻訳者が交代し誤訳を原文へ戻す作業が始まった。林玉蘭と台湾避難網が担当に入り、湊は海上通信を今すぐ答えの出る問題として扱わなかった。
確認したのは端末表示だけではない。時刻、設備の温度、電位、紙の記録、立ち会った者の証言を分け、同じ出来事が二つ以上の手段で一致するか確かめる。
この日の基準は「海外協力を物資の無限輸送にせず、天候・翻訳・港湾状態を毎回確認する」ことだった。急ぐ理由があっても、本人の同意、医療上の停止、避難所の生活を飛び越える命令は認めない。
翻訳者の休息に関する新しい記録は得られたが、それだけで所有者、味方、敵を決める表示は保留した。分からない欄には《未確認》と書き、沈黙を同意へ変換しない。
物資台帳は地域食料十一日、体育館三日、旧学校四日、燃料二日。農業区画の作物はまだ収穫前で、遠隔地の支援情報も在庫へ加えない。減った数字を隠さず、医療、浄水、冷却を優先する。
岳と整備班は使った工具、部材、燃料を戻り数まで確認した。迷宮機能が動いても、消耗品が増えたことにはしない。
県庁へ送る報告は個人名を外し、人数と必要支援だけに絞った。相馬も中央命令と県内実務を同じ承認欄へ混ぜなかった。
旧小学校では授業と休息を予定どおり続け、子どもを観測要員にしない。変化を見つけても、褒美や配給へ結びつけなかった。
三避難所の在庫は別々に計算し、移動者の札で重複を消した。遠方から情報が届いても、食料や燃料が届いた扱いにはしない。
記録は原文、観測、推測、決定の四欄に分けた。後から結論が変わっても、最初の誤りや迷いを消さないためだった。
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