装置だった迷宮
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第十迷宮の保存室で、破壊禁止の根拠を三圏で共有する作業が始まった。北見静香と北海道研究班が担当に入り、湊は隔離装置説を今すぐ答えの出る問題として扱わなかった。
確認したのは端末表示だけではない。時刻、設備の温度、電位、紙の記録、立ち会った者の証言を分け、同じ出来事が二つ以上の手段で一致するか確かめる。
この日の基準は「仮説と観測事実を分け、原資料の欠損を推測で埋めない」ことだった。急ぐ理由があっても、本人の同意、医療上の停止、避難所の生活を飛び越える命令は認めない。
装置だった迷宮に関する新しい記録は得られたが、それだけで所有者、味方、敵を決める表示は保留した。分からない欄には《未確認》と書き、沈黙を同意へ変換しない。
物資台帳は地域食料十四日、体育館五日、旧学校六日、燃料四日。農業区画の作物はまだ収穫前で、遠隔地の支援情報も在庫へ加えない。減った数字を隠さず、医療、浄水、冷却を優先する。
岳と整備班は使った工具、部材、燃料を戻り数まで確認した。迷宮機能が動いても、消耗品が増えたことにはしない。
県庁へ送る報告は個人名を外し、人数と必要支援だけに絞った。相馬も中央命令と県内実務を同じ承認欄へ混ぜなかった。
旧小学校では授業と休息を予定どおり続け、子どもを観測要員にしない。変化を見つけても、褒美や配給へ結びつけなかった。
三避難所の在庫は別々に計算し、移動者の札で重複を消した。遠方から情報が届いても、食料や燃料が届いた扱いにはしない。
記録は原文、観測、推測、決定の四欄に分けた。後から結論が変わっても、最初の誤りや迷いを消さないためだった。
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