壁の向こうの数え歌
【本文】
昼休み、子どもたちが北側教室の壁へ耳を当てていた。四秒でも六秒でもない、十一秒ごとの小さな音がするという。
大人の耳には配管音にしか聞こえない。結衣は「さん、に、いち、まって」と言葉の切れ目を紙へ書いた。
学校で見つかったことは、児童名を外して地域網、体育館、病院へ共有する。発見者を特別な能力者として登録せず、授業と休息の時間を変えない。
佳乃は怖がらせず、触らない、叩かない、聞こえた時刻だけ記す規則を作る。壁を開ける前に、空調、給水、電線の図面と照合した。
教室を調査区画だけにせず、予定していた読み書き、計算、遊びを続ける。壁の音が鳴っても、児童全員を観測当番へ集めない。
世界の声が報酬や即時解放を表示しても、地上の図面、避難経路、本人同意を先に確認する。分からない部分は推測で埋めず、次の観測時刻を決めた。
遊びの数え歌に見えた音は、誰かが壁の内側で手順を繰り返しているようだった。
佳乃は授業記録と設備記録を別冊にし、子どもの言葉を大人向けの管理用語へ勝手に書き換えなかった。
音を聞けない子も壁を叩いて確かめようとしたため、床へ待機線を引いた。聞き取り役は一回五分、二人まで。頭痛や耳鳴りが出たら授業へ戻す。録音機は壁へ固定し、人間が夜中まで残らない。十一秒周期が空調停止中にも続くか調べるため、奈々が生活に影響しない三分だけ送風を止めた。
観測後は教室の換気、電位、児童の体調を確認し、異常がなくても記録した。発見した子だけへ褒美を与えず、参加しなかった子の遊びと学習時間も同じように守る。
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